【精神科専門医解説】柴胡加竜骨牡蛎湯の効果・作用機序・副作用|不安・不眠・動悸への使い方

目次
はじめに
「不安や緊張が続いて、なかなか気持ちが休まらない」「イライラして眠れない」「緊張すると動悸がする」――このように、精神的な高ぶりと不眠・動悸などの身体症状が重なっている状態で選択肢となる漢方薬の一つが、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)です。
精神科・心療内科では、不安、焦燥感、いらだち、不眠、動悸などが組み合わさり、心身ともに緊張が続いている場合に使用を検討することがあります。
一方、柴胡加竜骨牡蛎湯は、SSRIなどの抗うつ薬やベンゾジアゼピン系抗不安薬、一般的な睡眠薬と同じ作用を持つ薬ではありません。現在知られている中枢神経系への作用には、動物実験を中心とした前臨床研究から得られた知見も多く含まれます。
このページでは、柴胡加竜骨牡蛎湯の効果、作用機序、精神科臨床での位置づけ、飲み方、副作用に加え、甘草・麻黄・柴胡・大黄など、処方時に確認しておきたい生薬の有無についても解説します。
柴胡加竜骨牡蛎湯とは?
柴胡加竜骨牡蛎湯は、複数の生薬から構成される漢方製剤です。医療用では、ツムラ柴胡加竜骨牡蛎湯エキス顆粒(ツムラ12番/TJ-12)などが使用されています。
漢方医学では、精神的な高ぶり、いらだち、不眠、動悸などを伴う状態に用いられてきた処方です。現在の精神科・心療内科でも、こうした症状が複合してみられる場合に処方を検討します。
甘草や麻黄を含まない点は併用処方を考えるうえで確認しやすい特徴ですが、本剤そのものには間質性肺炎や肝機能障害などの重大な副作用が報告されています。また、大黄についてはメーカーによって処方構成が異なるため、処方名だけでなく実際の製品名まで確認することが重要です。
ツムラ12の構成生薬
ツムラ柴胡加竜骨牡蛎湯エキス顆粒では、1日量7.5g中に以下の10種類の生薬から得られた乾燥エキス4.5gが含まれています。
| 生薬 | 原生薬量 | ポイント |
|---|---|---|
| 柴胡(サイコ) | 5.0g | 本処方の中心となる生薬 |
| 半夏(ハンゲ) | 4.0g | 処方構成生薬 |
| 桂皮(ケイヒ) | 3.0g | 処方構成生薬 |
| 茯苓(ブクリョウ) | 3.0g | 処方構成生薬 |
| 黄芩(オウゴン) | 2.5g | 柴胡とともに含まれる主要生薬 |
| 大棗(タイソウ) | 2.5g | 処方構成生薬 |
| 人参(ニンジン) | 2.5g | 処方構成生薬 |
| 牡蛎(ボレイ) | 2.5g | 竜骨とともに処方名の由来となる生薬 |
| 竜骨(リュウコツ) | 2.5g | 牡蛎とともに処方名の由来となる生薬 |
| 生姜(ショウキョウ) | 1.0g | 処方構成生薬 |
市販薬や他院処方薬を服用している場合には、処方名だけでなくメーカー・製品名まで確認してください。
どのような症状に使われる?
ツムラ柴胡加竜骨牡蛎湯の電子添文では、「比較的体力があり、心悸亢進、不眠、いらだち等の精神症状のあるもの」が処方対象として示されています。
精神科臨床では、診断名だけではなく、次のような症状の組み合わせをみながら使用を検討します。
- 不安・緊張:気持ちが張りつめ、なかなか力を抜けない
- 焦燥感:落ち着かず、じっとしていても気持ちが休まらない
- いらだち:些細なことが気になり、怒りっぽくなる
- 不眠:考え事や神経の高ぶりによって寝つきにくい
- 動悸:緊張やストレスに伴って胸がドキドキする
- 過覚醒:頭や身体が休まらず、神経が張った状態が続く
症状から疾患を整理したい場合は、精神科・心療内科|症状・お悩みから探すもご参照ください。
こうした症状は、全般性不安症、パニック症、適応障害、不眠障害などでもみられます。
不安症全般については、不安症群や、精神科・心療内科|疾患・特性から探すもご覧ください。
漢方薬は治療選択肢の一つであり、必要な標準治療を漢方薬だけで置き換えないことが重要です。
柴胡加竜骨牡蛎湯の作用機序

柴胡加竜骨牡蛎湯は多数の生薬成分から構成されるため、一般的な向精神薬のように「特定の受容体を遮断する」「一つの神経伝達物質を増やす」といった単一の作用機序では説明できません。
精神科領域で特に注目されているのが、慢性ストレスに伴うHPA系の変化と、前頭前野におけるセロトニン・ドパミン神経伝達への作用です。
→
HPA系・前頭前野機能の変化
→
不安・焦燥・不眠・動悸など
1.慢性ストレスとHPA系
HPA系(視床下部―下垂体―副腎系)は、ストレスに対する身体反応を調節する重要なシステムです。
ストレスを受けると、視床下部から下垂体、副腎へと情報が伝わり、副腎皮質ホルモンなどを介して身体をストレスへ対応できる状態に変化させます。
一方、強いストレスが長期間続くと、HPA系におけるグルココルチコイドのネガティブフィードバック機構が適切に働きにくくなることがあります。
慢性ストレスを加えたラットでは、柴胡加竜骨牡蛎湯によって副腎重量増加の抑制や、グルココルチコイド・ネガティブフィードバック低下の改善が報告されています。
これは、柴胡加竜骨牡蛎湯が単純に神経を鎮静するのではなく、慢性的なストレスによって変化したストレス応答系を調節する可能性を示す知見です。
2.前頭前野のセロトニン・ドパミン
前頭前野は、感情調節、注意、意思決定、行動のコントロールなどに関与する脳領域です。
ラット慢性ストレスモデルでは、前頭前野におけるセロトニン(5-HT)およびドパミン(DA)の細胞外濃度が低下しますが、柴胡加竜骨牡蛎湯の投与によってこの低下が抑制されたことが報告されています。
3.不安・不眠・動悸との関係
柴胡加竜骨牡蛎湯では、精神的な不安やいらだちだけでなく、心悸亢進、つまり動悸も重要な処方目標です。
不安や緊張が強くなると、動悸、発汗、筋緊張、呼吸の変化など、身体的な過覚醒症状が現れることがあります。
柴胡加竜骨牡蛎湯は、このように精神的な高ぶりと身体的な過覚醒が同時にみられる状態で使われることがあります。
ただし、ヒトにおいて交感神経と副交感神経を直接「正常化する」と確立されているわけではありません。HPA系や神経伝達系を含めた複合的な作用として理解するのが適切です。
精神科臨床ではどのような人に検討する?
- 比較的体力が保たれている
- 不安と同時に焦燥感やいらだちが強い
- 神経が高ぶって寝つけない
- 緊張すると動悸がする
- 考え事が頭から離れず、なかなか休まらない
- 精神症状と身体症状が重なっている
特に、全般性不安症でみられる持続的な不安や緊張、パニック症でみられる動悸などの身体症状、不眠障害でみられる入眠困難などと症状が重なることがあります。
一方、強いうつ状態、躁状態、重度のパニック発作、精神病症状、自殺念慮などがある場合には、漢方薬だけで対応するのではなく、その病態に応じた評価と治療が必要です。
不安症状が強い場合には、当院の強迫症・不安症専門外来などでも、症状や日常生活への影響を評価し、心理療法や薬物療法を含めて治療方針を検討しています。
漢方医学でいう「証」とは?
漢方薬では、西洋医学的な診断名だけでなく、体力、症状の組み合わせ、身体所見などを含めた「証」を参考に処方します。
柴胡加竜骨牡蛎湯は、一般に比較的体力があり、精神的な高ぶり、いらだち、不眠、動悸などが目立つ状態で検討されます。
胸脇苦満
柴胡を含む処方を検討するとき、漢方医学では胸脇苦満(きょうきょうくまん)と呼ばれる腹診所見を参考にすることがあります。
みぞおちから肋骨の下にかけて、抵抗感や圧痛がみられる状態を指します。
腹部の拍動
腹部、とくに臍周辺で大動脈の拍動を強く触れる所見も、伝統的には柴胡加竜骨牡蛎湯の処方選択の参考とされることがあります。
症状、体力、身体疾患、治療経過、併用薬などを総合して処方を検討します。
不安に対する柴胡加竜骨牡蛎湯
柴胡加竜骨牡蛎湯は、単純に「不安がある」というより、不安にいらだち・焦燥・不眠・動悸などが重なっている状態をイメージすると特徴を理解しやすくなります。
全般性不安症では、過剰な心配だけでなく、神経の高ぶり、易怒性、筋緊張、睡眠障害などを伴うことがあります。
全般性不安症の薬物療法では、SSRIやSNRIなどの抗うつ薬が使用されるほか、症例によってはタンドスピロン、プレガバリン、クエチアピンなどが検討されることがあります。
神経の過剰な興奮を調整する薬としては、適応やエビデンスは異なりますが、ガバペンチン(ガバペン)についても精神科領域で研究されています。
一方、突然の動悸や息苦しさを伴う激しい発作が中心の場合には、パニック症なども鑑別します。
不安症全体については、不安症群もあわせてご覧ください。
動悸に対して使うときの注意
柴胡加竜骨牡蛎湯の処方目標には心悸亢進がありますが、動悸があるからといって精神的な原因とは限りません。
動悸は、不整脈、甲状腺疾患、貧血、感染症、薬剤、カフェインなどでも生じます。
突然の強い動悸や息苦しさが生じ、強い恐怖を伴う場合にはパニック症の可能性がありますが、初めて生じた強い身体症状では身体疾患の評価も重要です。
不眠に対する柴胡加竜骨牡蛎湯
柴胡加竜骨牡蛎湯は、特に神経の高ぶりを伴う不眠で使用されることがあります。
- イライラして眠れない
- 緊張が抜けず眠れない
- 考え事が頭から離れない
- 動悸や落ち着かなさを伴う
- 身体は疲れていても頭が休まらない
こうした不眠は、全般性不安症や適応障害などに伴って現れることもあります。
一方、慢性的な不眠では、うつ病、不安症、睡眠時無呼吸症候群、睡眠・覚醒リズムの問題、身体疾患、服用薬などの評価も必要です。
不眠そのものについては、不眠障害(不眠症)をご覧ください。薬物療法ではゾルピデム、エスゾピクロンなどのZ薬や、オレキシン受容体拮抗薬などが症状に応じて使用されます。
ベンゾジアゼピン系薬の作用や依存・減薬について知りたい方は、同系統の薬理を持つクロナゼパム(リボトリール・ランドセン)の解説も参考になります。
ストレスが原因の症状に使われる?
柴胡加竜骨牡蛎湯は、ストレスに伴う不安、焦燥、動悸、不眠などに使用されることがありますが、ストレスそのものを取り除く薬ではありません。
仕事、人間関係、家庭環境など明確なストレス因を背景として症状が生じている場合には、環境調整や心理的支援も重要です。
明確なストレス因に反応して抑うつ、不安、不眠などが生じている場合には、適応障害などの可能性も含めて評価します。
薬物療法以外を含む治療選択肢については、精神科・心療内科の治療・支援をご参照ください。
効果はいつ頃からわかる?
柴胡加竜骨牡蛎湯は、ベンゾジアゼピン系抗不安薬や一部の睡眠薬のように、服用直後の明確な鎮静作用を目的とする薬ではありません。
精神科臨床では、症状や重症度にもよりますが、2~4週間程度を一つの目安として症状の変化を確認することがあります。
飲み方・用法用量
食前とは?
食事の前に服用することを指し、一般的には食事のおよそ30分前を目安とします。
食間とは?
「食事中」という意味ではなく、食事と食事の間を意味します。一般的には食後約2時間程度が目安です。
飲み忘れた場合に、自己判断で2回分をまとめて服用しないでください。
大黄を含む製剤と含まない製剤がある
柴胡加竜骨牡蛎湯では、メーカーによる処方構成の違いが臨床上重要です。
| 確認項目 | ツムラ12 | 臨床上のポイント |
|---|---|---|
| 甘草 | なし | 甘草由来グリチルリチンを含まない |
| 麻黄 | なし | 麻黄由来のエフェドリン類を含まない |
| 柴胡 | あり | 本処方の中心となる生薬 |
| 黄芩 | あり | 柴胡とともに含有される主要生薬 |
| 大黄 | なし | 他社製剤では含むものがあり、下痢・腹痛などへの注意が変わる |
副作用
漢方薬は天然由来の生薬から作られていますが、副作用がない薬ではありません。
比較的みられる可能性のある副作用
- 胃部不快感
- 発疹
- 発赤
- かゆみ
- 蕁麻疹
大黄を含む製剤では、下痢や腹痛などの消化器症状にも注意します。
発熱、咳、息苦しさ、呼吸困難などがみられた場合には、服用を中止して速やかに医療機関へ相談してください。
強い倦怠感、食欲低下、吐き気、皮膚や白目が黄色くなる、尿の色が濃くなるなどがみられた場合には医療機関へ相談してください。
既往歴、症状、投与期間、併用薬などを踏まえ、必要に応じて肝機能などを確認します。
妊娠・授乳中、高齢者、小児での使用
妊娠中
妊娠中または妊娠している可能性がある場合には、治療上の有益性とリスクを考慮して処方を判断します。
特に大黄を含む製剤では注意事項が異なるため、使用している製品を確認することが重要です。
授乳中
授乳中も、治療上の有益性と授乳継続の有益性を考慮して判断します。大黄を含む製剤では、大黄由来成分の影響についても確認します。
高齢者
高齢者では生理機能が低下していることを考慮し、必要に応じて減量するなど慎重に使用します。
小児
小児等を対象とした十分な臨床試験は行われていません。年齢、体格、症状などを踏まえて処方を判断します。
ほかの漢方薬との違い
不安、不眠、いらだちなどに使用される漢方薬はいくつかありますが、同じ症状でも処方の考え方は異なります。
| 漢方薬 | 臨床的にイメージしやすい特徴 |
|---|---|
| 柴胡加竜骨牡蛎湯 | 不安・焦燥・いらだち・不眠・動悸など、精神的高ぶりと身体症状が重なる |
| 抑肝散 | 易怒性・興奮・神経過敏・怒りっぽさなどが目立つ |
| 半夏厚朴湯 | 不安や緊張に、喉のつかえ・胸部違和感などの身体感覚を伴う場合に検討する |
| 酸棗仁湯 | 心身が疲れているにもかかわらず眠れない状態で検討する |
| 桂枝加竜骨牡蛎湯 | 神経過敏・不安・不眠などを伴い、柴胡加竜骨牡蛎湯より虚弱傾向を念頭に置く |
柴胡加竜骨牡蛎湯は睡眠薬・抗不安薬の代わりになる?
柴胡加竜骨牡蛎湯は、不安や不眠に使用される点では抗不安薬や睡眠薬と重なる部分があります。
しかし、抗不安薬や睡眠薬と同程度の治療効果を持つ代替薬として確立されているわけではありません。
比較的軽度の不安・焦燥や、不眠と動悸などの身体症状が組み合わさっている場合に、症状や患者さんの希望を踏まえて選択肢の一つとして検討します。
ベンゾジアゼピン系薬は即効性のある抗不安・鎮静作用を持つ一方、長期使用では身体依存や離脱症状に注意する必要があります。詳しくはクロナゼパム(リボトリール・ランドセン)の依存性・減薬もご参照ください。
必要に応じて、漢方薬だけでなく抗うつ薬や睡眠薬、心理療法などを組み合わせます。精神科で使用する薬剤全体については、治療薬一覧をご覧ください。
過食や肥満に効果はある?
柴胡加竜骨牡蛎湯は、肥満や過食性障害そのものの治療薬ではありません。
ストレスや不安と食行動が関連するケースはありますが、柴胡加竜骨牡蛎湯に過食を直接抑制したり、体重を減少させたりする効果が確立しているわけではありません。
「短時間に大量に食べてしまう」「食べ始めると自分では止められない」といった症状を繰り返す場合には、過食性障害などを含めた評価が必要です。
食行動に関連する疾患については、摂食症群をご参照ください。
なお、精神科薬による体重増加や過食への補助的治療として研究されている薬剤にはトピラマート(トピナ)などがありますが、柴胡加竜骨牡蛎湯とは目的・作用機序・エビデンスが異なります。
よくある質問
柴胡加竜骨牡蛎湯には依存性がありますか?
ベンゾジアゼピン系薬で問題となるような薬理学的依存や耐性を形成する薬としては知られていません。
ベンゾジアゼピン系薬の身体依存や離脱については、クロナゼパムの減薬・依存性の解説も参考になります。
飲むと眠くなりますか?
強い鎮静作用によって眠らせるタイプの睡眠薬ではありません。神経の高ぶりを伴う不眠に使用されることがありますが、服用直後に強い眠気が生じることを目的とする薬ではありません。
睡眠障害全般については、不眠障害の解説もご覧ください。
甘草は入っていますか?
ツムラ柴胡加竜骨牡蛎湯には甘草は含まれていません。そのため、ツムラ12単剤では甘草由来のグリチルリチンを含みません。
甘草を含む漢方薬の例としては、抑肝散があります。漢方薬を複数併用する場合には、処方名だけでなく構成生薬の重複を確認します。
エフェドリンは入っていますか?
ツムラ柴胡加竜骨牡蛎湯には麻黄が含まれていないため、麻黄由来のエフェドリン類は含まれていません。
柴胡は入っていますか?
含まれています。ツムラ12では1日量あたり柴胡5.0gを原生薬として使用しており、処方名の通り柴胡を中心とする柴胡剤の一つです。
抑肝散にも柴胡が含まれているため、複数の漢方薬を併用する際は構成生薬の重複にも注意します。
大黄は入っていますか?
ツムラ12には大黄は含まれていません。ただし、他社の柴胡加竜骨牡蛎湯には大黄を含む製剤があります。同じ処方名でも製品によって内容が異なるため、メーカーを確認してください。
抗うつ薬や睡眠薬と一緒に飲めますか?
臨床では併用する場合があります。
抗うつ薬、睡眠薬、ベンゾジアゼピン系薬などを使用している場合も、漢方薬だから別枠と考えず、すべての服用薬を医師・薬剤師へ伝えることが重要です。
精神科で使用する治療薬については、治療薬一覧もご参照ください。
動悸があれば柴胡加竜骨牡蛎湯が合いますか?
動悸は柴胡加竜骨牡蛎湯を検討する症状の一つですが、動悸だけで処方を決定するわけではありません。
突然の強い動悸を繰り返す場合にはパニック症の可能性がある一方、不整脈、甲状腺疾患、貧血など身体疾患も鑑別する必要があります。
まとめ
柴胡加竜骨牡蛎湯は、不安、焦燥、いらだち、不眠、動悸など、精神的な高ぶりと身体症状が重なっている状態で使用される漢方薬です。
前臨床研究では、慢性ストレスモデルにおいて、HPA系のグルココルチコイド・ネガティブフィードバック異常や、前頭前野のセロトニン・ドパミン神経伝達低下を改善する可能性が報告されています。
ただし、こうした知見の多くは動物実験に基づくものであり、「セロトニンを増やす漢方」「自律神経を直接正常化する薬」と単純化して説明するのは適切ではありません。
また、漢方薬では処方名だけでなく含まれる生薬を確認することが重要です。ツムラ12では甘草なし・麻黄なし・柴胡あり・黄芩あり・大黄なしですが、大黄については製剤による違いがあります。
不安や不眠が長く続いている場合には、漢方薬だけに限定せず、疾患・特性を適切に評価したうえで、必要に応じて薬物療法、心理療法、生活・環境調整などを組み合わせて治療します。
精神科で使用するほかの薬剤については、精神科・心療内科の治療薬一覧もご覧ください。

医療法人社団燈心会 理事長/ライトメンタルクリニック 渋谷本院 院長
清水聖童(Seido Shimizu)
精神保健指定医 / 日本精神神経学会認定専門医 / 認知症サポート医 / コンサータ処方登録医
引用・参考文献
・Mizoguchi K, Yuzurihara M, Ishige A, Sasaki H, Tabira T. Saiko-ka-ryukotsu-borei-to, an herbal medicine, prevents chronic stress-induced disruption of glucocorticoid negative feedback in rats. Life Sci. 2002;72(1):67-77.
・Mizoguchi K, Yuzurihara M, Ishige A, Aburada M, Tabira T. Saiko-ka-ryukotsu-borei-to, a herbal medicine, ameliorates chronic stress-induced depressive state in rotarod performance. Pharmacol Biochem Behav. 2003;75(2):419-425.
・井上猛, 桑原斉, 酒井隆, 鈴木映二, 水上勝義, 宮田久嗣, 諸川由実代, 吉尾隆, 渡邉博幸 編. こころの治療薬ハンドブック 第16版. 星和書店; 2026.
・樋口輝彦, 市川宏伸, 神庭重信, 朝田隆, 中込和幸 編. 今日の精神疾患治療指針 第2版. 医学書院; 2016.
・姫井昭男. 精神科の薬がわかる本 第5版. 医学書院; 2024.
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