【精神科専門医解説】イフェクサーSR(ベンラファキシン)の効果・作用機序・副作用|全般不安症・離脱症状・用量による違い

目次
はじめに
イフェクサーSR(一般名:ベンラファキシン)は、
セロトニンとノルアドレナリンの働きを調整する
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)です。
日本では「うつ病・うつ状態」の治療薬として使用されてきましたが、
2026年3月から「全般不安症」にも正式に適応が追加されました。
抑うつ症状だけでなく、慢性的な不安や心配が続く患者さんに対しても、
保険診療で使用できる抗うつ薬となっています。
イフェクサーSRの特徴は、
投与量によって薬理作用のバランスが変化することです。
低用量ではセロトニン再取り込み阻害作用が中心となり、
増量するにつれてノルアドレナリン再取り込み阻害作用が加わってきます。
また、比較的しっかりした抗うつ・抗不安作用を期待できる一方で、
開始時の吐き気、血圧上昇、発汗、性機能への影響、
そして急な減量や中止による中止後症候群には注意が必要です。
イフェクサーSRは、うつ病・うつ状態と全般不安症に使用できるSNRIです。
75mgではセロトニン作用が中心となり、
150mg以上では臨床的にノルアドレナリン作用の上乗せを意識しやすく、
225mgではその作用がより明確になると考えられます。
一方、抗うつ薬の中でも中止後症候群には特に注意が必要です。
イフェクサーSRの基本情報
ベンラファキシン塩酸塩
イフェクサーSR
SNRI
うつ病・うつ状態/全般不安症
37.5mg/日
75~225mg/日
1日1回・食後
225mg/日
未変化体 約8~10時間/ODV 約11~12時間
O-脱メチルベンラファキシン(ODV)
イフェクサーSRの作用機序
脳内で放出されたセロトニン(5-HT)とノルアドレナリン(NA)は、
神経終末に存在するトランスポーターによって再び取り込まれます。
ベンラファキシンと、
その活性代謝物である
O-脱メチルベンラファキシン(ODV)は、
セロトニントランスポーター(SERT)と
ノルアドレナリントランスポーター(NET)を阻害します。
その結果、
シナプス間のセロトニン・ノルアドレナリン濃度が上昇し、
脳内の神経伝達が徐々に調整されます。
SERT・NETを阻害
→
5-HT・NAの再取り込み低下
→
シナプス間濃度上昇
→
神経伝達を調整

セロトニンとノルアドレナリンの神経伝達を調整します。
用量で作用が変化するSNRI
イフェクサーSRを理解するうえで重要なのが、
用量によってセロトニン作用とノルアドレナリン作用のバランスが変わる
という特徴です。
低用量ではセロトニン再取り込み阻害作用が中心です。
そのため、薬理学的にはSSRIに近い挙動を示します。
一方、用量を増やすにつれて
ノルアドレナリントランスポーターへの作用も加わってきます。
| 1日量 | 薬理学的なイメージ | 臨床上の位置づけ |
|---|---|---|
| 37.5mg | 導入量 | 主として初期副作用への忍容性を確認する段階。 |
| 75mg | SERT阻害が中心 | 正式な治療用量。75mgで十分改善する患者さんもいます。 |
| 150mg | SERT作用に加え、NET作用の上乗せを意識する領域 | 75mgで部分反応にとどまる場合に増量を検討します。 |
| 225mg | ノルアドレナリン作用がより明確 | 十分な効果を狙う場合の国内最大用量。 血圧、発汗、不眠などにも注意します。 |
「150mgからSNRIになる」と完全に線引きできるわけではありません
イフェクサーについて、
「75mgまではSSRI、150mg以上からSNRI」と説明されることがあります。
臨床的なイメージとしては分かりやすいのですが、
150mgを境に薬理作用が突然切り替わるわけではありません。
ヒトPET研究では、
150~300mg/日の投与群で脳内NET占有が確認されており、
NET占有率は用量に応じて増える傾向が示されています。
したがって、
実臨床では
150mg以上からノルアドレナリン作用の上乗せを期待し、
225mgではより明瞭になる
という理解が使いやすいと考えられます。
活性代謝物ODVとは?
ベンラファキシンは主としてCYP2D6によって代謝され、
活性代謝物である
O-脱メチルベンラファキシン(ODV)
になります。
ODVにもセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用があり、
未変化体とODVを合わせて薬理作用を発揮します。
一方で、
CYP2D6の遺伝子多型によって
ベンラファキシンとODVの血中濃度比は変化します。
したがって、
「CYP2D6の個人差をほとんど受けない薬」
とまで考えるのは適切ではありません。
三環系抗うつ薬との違い
ベンラファキシンは、
三環系抗うつ薬と比較すると
ムスカリン性アセチルコリン受容体、
ヒスタミンH1受容体、
α1アドレナリン受容体への直接的な親和性が低い薬です。
そのため、
三環系抗うつ薬で問題になりやすい
強い抗コリン作用、強い鎮静、起立性低血圧などは
比較的起こりにくくなっています。
ただし、
口渇、便秘、眠気などが全く起こらないわけではありません。
SR(徐放性)カプセルとは?
SRは徐放製剤を意味します。
薬剤を一度に放出するのではなく、
時間をかけて放出するよう設計されているため、
1日1回投与が可能です。
徐放化によって急激な血中濃度上昇を抑えることができますが、
「SR製剤だから中止後症候群が起こりにくい」
という意味ではありません。
ベンラファキシンは徐放製剤であっても、
急な減量や中断による症状には十分注意する必要があります。
カプセルの内容物を砕かない
イフェクサーSRは徐放性を保つため、
カプセルの内容物を砕いたり、すりつぶしたりせず、
そのまま噛まずに服用します。
イフェクサーSRの効果・適応
うつ病・うつ状態
イフェクサーSRは、
抑うつ気分、興味や喜びの低下、意欲低下、
集中困難、不安などを伴う
うつ病・うつ状態に使用されます。
国内臨床試験でも有効性が検討されており、
海外を含む複数の臨床試験・メタ解析でも
ベンラファキシンの抗うつ作用が確認されています。
全般不安症
2026年3月、
イフェクサーSRには
全般不安症の国内適応が追加されました。
全般不安症では、
仕事、健康、家族、金銭など複数の事柄について
過剰な心配や不安が長期間続き、
自分ではうまくコントロールできなくなります。
緊張、疲れやすさ、集中困難、イライラ、
筋肉の緊張、不眠などを伴うこともあります。
国内第III相試験では、
成人の全般不安症に対して
イフェクサーSR 75~225mg/日を8週間投与し、
HAM-A(ハミルトン不安評価尺度)について
プラセボに対する統計学的な有効性が確認されました。
2026年
全般不安症
8週
75~225mg/日
52週
国内長期投与試験
高用量ほど効くの?
イフェクサーでは、
用量を増やすことで効果が上乗せされる患者さんがいます。
一方で、
225mgが75mgの3倍効くという単純な関係ではありません。
大規模な用量反応メタ解析では、
ベンラファキシンの抗うつ効果は
75~150mg付近まで比較的増加し、
それ以上では効果の上昇が緩やかになる傾向が示されています。
また、高用量ほど
副作用による治療中断が増えやすくなるため、
全員を225mgまで増量することが合理的とは限りません。
高用量が意味を持つ患者さんもいます
一方、75mgまたは150mgである程度の改善がみられており、
副作用にも問題がない場合には、
150~225mgへ増量することで
さらに改善が得られる可能性があります。
特にイフェクサーは用量によって薬理作用のバランスも変化するため、
低用量で十分な効果がなかったという理由だけで
すぐに「無効」と判断する必要はありません。
イフェクサーSRの用法・用量
標準的な投与方法
開始時:
37.5mgを1日1回食後
1週間後:
75mgを1日1回食後
効果不十分の場合:
1週間以上の間隔をあけて75mg/日ずつ増量
最大用量:
225mg/日
37.5mgは主に導入量として使用されます。
75mgから治療効果を評価し、
効果が不十分で副作用に問題がなければ
150mg、225mgへの増量を検討します。
電子添文でも、
必要最小限の用量となるよう患者さんごとに慎重に調整する
ことが求められています。
朝と夕方、どちらに飲む?
イフェクサーSRは
1日1回食後に服用します。
不眠が目立つ場合には朝食後へ、
眠気が目立つ場合には別の食後へ調整するなど、
実臨床では副作用と生活リズムをみながら服用時刻を調整することがあります。
ただし、
自己判断で服用時間や服用量を大きく変更せず、
主治医と相談してください。
食後でなければ効かない?
薬物動態試験では、
空腹時と食後でベンラファキシンおよびODVの
Cmax・AUCに明らかな差は認められていません。
ただし、
国内の用法は1日1回食後ですので、
基本的には処方どおり食後に服用します。
肝機能・腎機能が低下している場合
重度の腎機能障害・重度肝機能障害では使用できません
糸球体ろ過量15mL/分未満の重度腎機能障害、
透析中の患者さん、
Child-Pugh分類Cの重度肝機能障害
では国内添付文書上、禁忌です。
中等度肝機能障害(Child-Pugh B)では、
通常より慎重な投与方法が設定されており、
37.5mgを2日に1回から開始し、
その後状態を確認しながら調整します。
軽度から中等度の腎機能障害でも
血中濃度が上昇する可能性があるため、
患者さんの状態をみながら慎重に使用します。
主な副作用
イフェクサーSRでは、
悪心、腹部不快感、口渇、便秘、
眠気、めまい、頭痛、不眠、発汗、動悸などがみられます。
特に開始初期では
吐き気が治療継続の妨げになることがあります。
吐き気
イフェクサーで比較的よくみられる副作用です。
開始直後に目立ち、
服用を続けるうちに軽くなる患者さんも多くいます。
吐き気が強い場合
37.5mgから開始し、
急いで増量しないことが基本です。
吐き気が強く食事や日常生活に支障が出る場合には、
我慢を続けず主治医へ相談してください。
血圧・脈拍の上昇
ノルアドレナリン作用によって、
血圧上昇や心拍数増加を生じることがあります。
特に高用量を使用する場合には注意が必要です。
電子添文でも、
投与中は適宜血圧・脈拍を測定することが求められています。
発汗
発汗が増える、寝汗をかくといった症状も
イフェクサーで比較的よくみられます。
軽度であれば経過観察できることがありますが、
生活への支障が大きい場合には
用量調整や薬剤変更を検討します。
性機能への影響
性欲低下、射精障害、勃起不全、
オルガズム障害などが生じることがあります。
患者さん側から相談しにくい副作用ですが、
服薬継続やQOLに大きく影響することがあります。
気になる場合は主治医へ相談してください。
中止後症候群 ― イフェクサーで特に重要な副作用
イフェクサーSRは、
抗うつ薬の中でも中止後症候群に特に注意したい薬の一つです。
急に中止したり、
大幅に減量したりすると、
めまい、吐き気、頭痛、発汗、不安、焦燥、
不眠、疲労感、感覚異常などが出現することがあります。
特徴的な症状として、
「頭の中を電気が走る感じ」
「ビリッとする感じ」
などの電撃様感覚を経験する患者さんもいます。
一般には「brain zaps」、
日本では俗に「シャンビリ感」と呼ばれることがあります。
自己判断で突然中止しない
電子添文でも、
投与を中止する場合には突然の中止を避け、
患者さんの状態を観察しながら
徐々に減量することが求められています。
一律に
「○週間で減らさなければならない」
という減量方法があるわけではありません。
服用量、服用期間、
過去の中止症状などを考慮しながら、
患者さんごとに減量速度を調整します。
「依存性」と「中止後症候群」は同じではありません
イフェクサーは、
アルコールや一部の依存性薬物のように
強い報酬感や渇望を主体とする薬ではありません。
一方で、
長期間薬を服用していると
神経系が薬の存在に適応するため、
急に薬がなくなることで
中止後症候群が生じることがあります。
そのため、
「依存する薬だから危険」と考えるのも、
「依存性がないから突然中止してよい」と考えるのも適切ではありません。
パキシルと並んで離脱症状に注意が必要?
抗うつ薬によって、
中止後症候群の起こりやすさには違いがあります。
近年の系統的レビュー・メタ解析では、
ベンラファキシンは中止症状の発生頻度が比較的高く、
パロキセチンとベンラファキシン/デスベンラファキシンは
重い中止症状とも関連しやすい薬剤
として報告されています。
これは、
パロキセチンやベンラファキシンのように
比較的半減期の短い抗うつ薬で
臨床的に離脱症状が問題になりやすいという経験とも整合します。
飲み忘れにも注意
ベンラファキシンでは、
計画的な減薬だけでなく、
飲み忘れによっても
中止症状を感じる患者さんがいます。
服薬忘れが多い場合は、
開始時点で医師へ相談しておくことが重要です。
その他の重要な注意点
セロトニン症候群
他のセロトニン作用薬との併用などによって、
不安、焦燥、発汗、発熱、頻脈、下痢、
筋肉のこわばり、ミオクローヌスなどを伴う
セロトニン症候群を起こすことがあります。
躁転
双極性障害が背景にある患者さんでは、
抗うつ薬によって
軽躁状態・躁状態が誘発される場合があります。
過去に、
睡眠時間が非常に短くても平気だった時期、
異常に活動的だった時期、
浪費や衝動的な行動が増えた時期などがある場合には、
治療開始前に医師へ伝えることが重要です。
若年者と自殺念慮
抗うつ薬では、
特に24歳以下の患者さんについて
自殺念慮・自殺企図のリスクに注意が必要です。
開始時や増量後に、
急激な不安、焦燥、不眠、易刺激性、
衝動性の増加などがみられた場合は
早めに医師へ相談してください。
高血圧がある場合
高血圧があるだけで
直ちにイフェクサーを使用できないわけではありません。
ただし、
投与前に高血圧を適切に管理し、
治療中も血圧・脈拍を確認する必要があります。
妊娠・授乳
妊娠中は、
治療上の利益とリスクを考慮したうえで
使用するかどうかを判断します。
妊娠末期にSSRI・SNRIを服用していた場合、
出生後の新生児に
呼吸、哺乳、神経症状などがみられることがあります。
ベンラファキシンおよびODVは母乳中へ移行するため、
授乳についても個別に検討します。
自動車の運転
眠気、めまいなどが起こることがあります。
こうした症状がある場合には、
自動車の運転や危険を伴う機械操作を避けてください。
飲み合わせ
MAO阻害薬との併用は禁忌です。
また、
SSRI・他のSNRI、リチウム、
トラマドール、フェンタニル、
デキストロメトルファン、
トリプタン系薬剤など
セロトニン作用を高める薬剤との併用では、
セロトニン症候群に注意します。
アスピリン、NSAIDs、
ワルファリンなどとの併用では
出血傾向が強くなる可能性があります。
アルコールとの併用も推奨されません。
他の抗うつ薬との臨床的な違い
| 薬剤 | 臨床的な特徴 | 注意しやすい点 |
|---|---|---|
| イフェクサーSR ベンラファキシン |
用量増加に伴ってNA作用が加わる。 うつ病・全般不安症に国内適応。 |
悪心、発汗、血圧上昇、 中止後症候群。 |
| サインバルタ デュロキセチン |
SNRI。 うつ病に加えて複数の疼痛疾患にも国内適応を持つ。 |
悪心、口渇、排尿症状、 肝機能など。 |
| パキシル パロキセチン |
抗不安作用を期待して使用されることも多いSSRI。 | 中止後症候群、 性機能障害、体重など。 |
| トリンテリックス ボルチオキセチン |
SERT阻害に加え、 複数の5-HT受容体を調節する。 |
特に開始時の悪心。 |
| ミルタザピン | 不眠や食欲低下を伴う患者で 使いやすい場合がある。 |
眠気、食欲増加、体重増加。 |
抗うつ薬全般については、
抗うつ薬の効果・副作用についての解説
も参考にしてください。
その他の精神科治療については、
TREATMENT|精神科の治療・支援
から確認できます。
イフェクサーSRは腰痛にも効く?
SNRIには、
慢性疼痛や神経障害性疼痛に使用される薬があります。
そのため、
「イフェクサーも腰痛に使えるのではないか」
と考える方もいるかもしれません。
しかし日本でイフェクサーSRに承認されている適応は、
うつ病・うつ状態と全般不安症です。
慢性腰痛症そのものに対する国内適応はありません。
同じSNRIでも、
サインバルタ(デュロキセチン)は
慢性腰痛症など複数の疼痛疾患に国内適応を持っており、
この点は両剤の大きな違いです。
執筆者の臨床的見解
150mg以上では「SNRIらしさ」を意識して使う
私自身はイフェクサーを、
単にSSRIとは別系統の抗うつ薬としてではなく、
用量によって薬理学的な性格をある程度使い分けられる抗うつ薬
として捉えています。
75mgではセロトニン再取り込み阻害作用が中心となりますが、
150mg以上ではノルアドレナリン作用の上乗せも期待して処方します。
もちろん150mgを境に
突然薬理作用が切り替わるわけではありません。
しかしPET研究でも150~300mg/日の用量域で
NET占有が確認されていることを考えると、
150mg以上を「SNRIらしい作用をより意識する用量域」と考えることには、
一定の薬理学的合理性があります。
難治例では高用量域まで試してから判断することがある
うつ症状が十分改善しない患者さんで、
75mgあるいは150mgに対して
ある程度の部分反応があり、
なおかつ副作用の忍容性が良好であれば、
私は150mgから225mgまで増量して
反応を見る価値があると考えています。
特に治療が難しい症例では、
75mgを使用しただけで
「イフェクサーが効かなかった」と判断するよりも、
患者さんの状態が許せば
ノルアドレナリン作用を期待できる高用量域まで
十分に試してみることがあります。
一方で、
これは
「難治性うつ病なら全例225mgにすべき」
という意味ではありません。
用量反応研究では、
75~150mg程度までの効果増加が比較的大きく、
その後は効果の上積みが緩やかになる一方、
副作用は増えやすくなります。
したがって私の場合は、
部分反応がある・忍容性が良い・まだ改善余地がある
という条件が揃った場合に、
高用量を狙う意味が特に大きいと考えています。
反対に、
75~150mgで全く変化がない患者さんを
機械的に225mgまで増量するとは限りません。
パキシルと並んで「やめ方」を強く意識する抗うつ薬
もう一つ、
イフェクサーを処方するときに私が強く意識しているのが
中止後症候群です。
臨床的には、
パキシル(パロキセチン)と並んで、
減量時・飲み忘れ時の症状に特に注意する抗うつ薬
という印象があります。
めまい、吐き気、不安、焦燥だけではなく、
いわゆる「シャンビリ感」や
電撃様感覚を強く訴える患者さんもいます。
これは単なる経験則だけではなく、
近年の系統的レビュー・メタ解析でも
ベンラファキシンは中止症状の頻度が比較的高く、
パロキセチンとベンラファキシン/デスベンラファキシンでは
重い中止症状にも注意が必要であることが示されています。
そのため私は、
イフェクサーを開始するときから
「どう効かせるか」だけでなく
「最終的にどう減らすか」まで考えて処方する薬
だと考えています。
特に服薬忘れが多い患者さんや、
過去に抗うつ薬の減量で強い離脱症状を経験した患者さんでは、
この点を開始前から説明しておくことが重要です。
よくある質問
Q. なぜ37.5mgから始めるのですか?
吐き気、めまい、眠気などの初期副作用を確認しながら、
体を薬に慣らすためです。
通常は1週間後に75mgへ増量します。
Q. 75mgでは少なすぎませんか?
いいえ。
75mgは正式な治療用量であり、
75mgで十分改善する患者さんもいます。
37.5mgは主に導入量と考えると分かりやすいでしょう。
Q. 150mgにすると何が変わりますか?
セロトニン作用に加えて、
ノルアドレナリン作用の上乗せを
より意識する用量域になります。
ただし、
150mgを境に突然作用が切り替わるわけではなく、
用量を増やすにつれて段階的に変化すると考えてください。
Q. 225mgまで増やした方がよく効きますか?
必ずしもそうではありません。
75~150mgで部分的な効果があり、
副作用に問題がない患者さんでは
225mgへの増量によってさらに改善することがあります。
一方、
高用量ほど副作用も増えやすいため、
全員を225mgまで増量するわけではありません。
Q. 全般不安症にも保険で使えますか?
はい。
2026年3月から、
日本でも全般不安症が正式な適応になっています。
Q. イフェクサーは依存する薬ですか?
一般的な依存性薬物のような
強い報酬感や渇望を主体とする薬ではありません。
ただし、
急な減量や中止によって
中止後症候群が起こることがあります。
そのため自己判断で突然中止しないことが重要です。
Q. パキシルとイフェクサーは離脱が強いのですか?
どちらも、
抗うつ薬の中では中止症状に特に注意したい薬です。
近年の研究でも、
ベンラファキシンでは中止症状が比較的多く、
パロキセチンやベンラファキシンでは
重い中止症状にも注意が必要であることが示されています。
Q. 1日飲み忘れただけでも症状が出ますか?
全員に起こるわけではありませんが、
イフェクサーは比較的半減期が短いため、
飲み忘れによって
めまい、違和感、電撃様感覚などを感じる患者さんもいます。
Q. 腰痛にも効きますか?
日本ではイフェクサーSRに
慢性腰痛症そのものの適応はありません。
同じSNRIでも、
デュロキセチンには慢性腰痛症を含む
複数の疼痛疾患への国内適応があります。
まとめ
イフェクサーSR(ベンラファキシン)は、
セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害するSNRIで、
国内では
うつ病・うつ状態と全般不安症
に使用できます。
低用量ではセロトニン作用が中心ですが、
増量するにつれてノルアドレナリン作用が加わります。
臨床的には
150mg以上ではSNRIとしてのノルアドレナリン作用をより意識し、
225mgではその作用がさらに明確になる
と考えると分かりやすいでしょう。
一方で、
高用量ほど必ず抗うつ効果が強くなるわけではありません。
75~150mgで部分反応があり、
副作用の忍容性が良好な患者さんでは、
225mgまで試してみる価値があります。
また、
ベンラファキシンは
パロキセチンと並んで中止後症候群に特に注意したい抗うつ薬
の一つです。
治療開始時から、
服薬継続だけでなく将来の減量方法まで考えて処方することが重要です。

ライトメンタルクリニック 渋谷本院 院長
清水聖童 (Seido Shimizu)
精神保健指定医 /
日本精神神経学会認定専門医 /
認知症サポート医 /
コンサータ処方登録医
引用・参考文献
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イフェクサーSRカプセル37.5mg/75mg
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