メンタルヘルスコラム

カルテオロール(ミケラン)とは?効果・副作用・アカシジアへの使用を解説

  • 更新日:2026.09.17
  • 公開日:2026.09.16

はじめに

「薬を飲み始めてから、そわそわしてじっとしていられない」
「座っているのがつらく、足を動かしたくなる」――
抗精神病薬などの服用後にこのような症状が現れた場合、
アカシジア(静座不能症)の可能性があります。

カルテオロール塩酸塩(商品名:ミケラン)は、
アドレナリンなどが作用するβ受容体を遮断する
β遮断薬(βブロッカー)です。
日本では、狭心症、心臓神経症、不整脈、本態性高血圧症に使用されています。

精神科領域では、抗精神病薬によるアカシジアに対して
β遮断薬が検討されることがあり、カルテオロールもその選択肢の一つとして用いられてきました。
ただし、
アカシジアに対する使用は国内の承認適応ではなく、適応外使用です。

この記事では、カルテオロールの作用機序や半減期、精神科領域での位置づけ、プロプラノロールとの違い、飲み方、副作用、使用時の注意点について解説します。

この記事のポイント

  • カルテオロールは、β1・β2受容体を遮断する非選択的β遮断薬
  • ISA(内因性交感神経刺激様作用)を持つことが薬理学的な特徴
  • 血中濃度の半減期は約5時間、最高血中濃度到達時間は約1時間
  • アカシジアに使用されることがあるが、国内では適応外使用

カルテオロール(ミケラン)とは?

カルテオロールは、
アドレナリンやノルアドレナリンが作用する
β1・β2受容体を遮断する非選択的β遮断薬です。

β1受容体は主に心臓に存在し、
刺激されると心拍数や心臓の収縮力が増加します。
一方、β2受容体は気管支や血管などにも存在しています。
カルテオロールはこれらの受容体を遮断することで、
交感神経による過剰な身体反応を抑えます。

カルテオロールの基本情報

一般名
カルテオロール塩酸塩
有効成分
1錠中 カルテオロール塩酸塩5mg
代表的な商品名
ミケラン錠5mg
薬効分類
非選択的β遮断薬(βブロッカー)
作用する受容体
β1・β2受容体
ISA
あり
国内での主な適応
狭心症・心臓神経症・不整脈・本態性高血圧症
最高血中濃度到達時間
約1時間
血中半減期
約5時間
主な代謝酵素
主としてCYP2D6
排泄
主に腎排泄
アカシジアへの使用
適応外使用
この記事で扱う製剤についてカルテオロールには複数の製剤がありますが、
本記事では主にミケラン錠5mgについて解説しています。
徐放製剤などでは用法・用量や適応が異なるため、同一のものとして扱わないよう注意が必要です。

カルテオロールの半減期は?

健康成人にカルテオロール塩酸塩10~30mgを単回経口投与した試験では、
血中濃度は約1時間後に最高となり、
血中半減期は約5時間でした。

最高血中濃度到達時間
約1時間
健康成人・単回投与
血中半減期
約5時間
健康成人・単回投与
未変化体の尿中排泄
約70%
経口投与後

半減期とは、血液中の薬物濃度が半分になるまでのおおよその時間です。
ただし、
半減期と実際の効果が続く時間は必ずしも一致しません。
カルテオロールではβ遮断作用や心拍数・血圧上昇を抑える作用が
比較的長く持続することも確認されています。

また、投与量の約70%が未変化体として尿中へ排泄されるため、
重い腎機能障害がある場合には副作用が生じやすくなる可能性があります。

カルテオロールの特徴「ISA」とは?

カルテオロールの薬理学的な特徴の一つが、
ISA(Intrinsic Sympathomimetic Activity:内因性交感神経刺激様作用)
を持っていることです。

一般的なβ遮断薬はβ受容体への刺激を抑えますが、
ISAを持つ薬剤では、β受容体を遮断しながら
弱い刺激作用も示します。

そのためカルテオロールは、
交感神経が強く働いている状況でその反応を抑えながらも、
安静時には心拍数や心機能を過度に抑制しにくいという特徴があります。

ISAがあっても徐脈や低血圧は起こりますISAを持つからといって、
「心拍数が下がらない」「低血圧にならない」という意味ではありません。
カルテオロールでも徐脈、低血圧、めまい、ふらつきなどは起こり得るため、
脈拍や血圧を確認しながら使用します。

精神科ではどのような場合に使われる?

アカシジア(静座不能症)

アカシジアは、
抗精神病薬などの使用によって生じることがある
薬剤性の運動症状です。

単に外見上「落ち着かない」というだけではなく、
身体の内側から突き上げてくるようなそわそわ感や、
じっとしていることに耐えられない不快感を伴うことがあります。

アカシジアでみられることのある症状

  • じっと座っていることがつらい
  • 足を絶えず動かしたくなる
  • 立ったり歩いたりを繰り返す
  • 動いている方が少し楽に感じる
  • 身体の内側に強い焦燥感や落ち着かなさを感じる

抗精神病薬によるアカシジアが疑われる場合には、
まず原因となっている薬剤を確認します。
可能であれば、
抗精神病薬の減量や、アカシジアを起こしにくい薬剤への変更
を検討することが基本です。

原因薬の調整だけでは十分でない場合や、
抗精神病薬を変更しにくい場合には、
β遮断薬などの追加治療が検討されることがあります。

カルテオロールのアカシジアへの位置づけβ遮断薬はアカシジアを改善する可能性がありますが、
現在の臨床試験全体のエビデンス確実性は高くありません。
カルテオロールについても日本でプラセボ対照試験が行われていますが、
研究数は限られています。そのため、
「カルテオロールがアカシジアの第一選択薬である」と一律に考えるのではなく、
原因薬の調整を基本としながら、必要に応じて検討する治療選択肢の一つ

と考えるのが適切です。

アカシジアへの使用は適応外ですカルテオロールの国内承認適応にアカシジアは含まれていません。
実際に使用する場合には、症状の程度、脈拍、血圧、既往歴、
併用薬などを確認したうえで治療を判断します。

動悸などの身体症状

不安や緊張が強まると交感神経が活発になり、
動悸、頻脈、手の震えなどの身体症状が現れることがあります。

カルテオロールはβ受容体を遮断することで、
こうした交感神経活動に伴う身体反応を抑える方向に働きます。

また、日本では
心臓神経症がカルテオロールの承認適応の一つとなっています。

一般的な「抗不安薬」とは異なりますカルテオロールは、不安や恐怖そのものを直接改善する薬ではありません。
不安症やパニック症などが背景にある場合には、
病態に応じて心理療法や薬物療法などを組み合わせて治療します。

カルテオロールはどのように効く?作用機序

緊張やストレスなどによって交感神経が活性化すると、
アドレナリンやノルアドレナリンが放出され、
β受容体を刺激します。

ストレス・緊張

交感神経が活性化

アドレナリン・ノルアドレナリン

β1・β2受容体を刺激

心拍数などの身体反応が増加

心臓のβ1受容体が刺激されると、
心拍数や心筋収縮力が増加します。
β2受容体は気管支、血管、骨格筋などの反応に関係しています。

カルテオロールは
β1・β2受容体を遮断することで、
アドレナリンやノルアドレナリンによる過剰な交感神経反応を抑えます。

カルテオロール(ミケラン)の作用機序。β1・β2受容体を遮断する仕組み
カルテオロールはβ1・β2受容体を遮断し、アドレナリンやノルアドレナリンによる交感神経反応を抑えます。図は作用機序をわかりやすく示したイメージです。

なぜβ遮断薬がアカシジアに使われるの?

アカシジアには、
抗精神病薬によるドパミン神経系への影響だけではなく、
ノルアドレナリンやセロトニンなど
複数の神経伝達系が関与すると考えられています。

βアドレナリン系の関与も以前から指摘されており、
β遮断薬による改善効果が研究されてきました。

ただし、
β遮断薬がアカシジアを改善する正確な仕組みは現在も完全には解明されていません。
単純に「交感神経を抑えるからアカシジアが治る」と説明できるものではありません。

カルテオロールとプロプラノロールの違い

カルテオロールとプロプラノロールは、
どちらもβ1・β2受容体を遮断する
非選択的β遮断薬です。
一方、薬理学的な性質やアカシジアに関する研究量には違いがあります。

項目 カルテオロール プロプラノロール
β受容体 β1・β2 β1・β2
ISA あり なし
中枢神経系への移行 比較的少ない 比較的高い
アカシジアに関する研究 プラセボ対照試験などがあるが限定的 比較的多くの臨床研究がある
アカシジアの国内承認 なし(適応外) なし(適応外)

アカシジアに対するβ遮断薬のエビデンスでは、
プロプラノロールについて蓄積された研究が多い一方、
カルテオロールについては比較的限られています。

したがって、どちらを使用するかは
アカシジアへの研究量だけではなく、
脈拍、血圧、循環器疾患、喘息の有無、併用薬なども含めて判断します。

カルテオロールの飲み方・用量

ミケラン錠5mgの国内承認用量では、
通常、成人にはカルテオロール塩酸塩として
1日10~15mgから開始します。

ミケラン錠5mgの通常の用法・用量カルテオロール塩酸塩として1日10~15mgから開始し、
効果が不十分な場合には30mgまで漸増します。
1日2~3回に分けて経口投与し、
年齢や症状に応じて適宜増減します。

これは狭心症、心臓神経症、不整脈、本態性高血圧症に対する
承認用法・用量です。

アカシジアには承認された用量設定がありませんアカシジアへの使用は適応外であり、
「アカシジアでは○mgが標準」と一律に定められた国内承認用量はありません。
症状だけでなく、脈拍や血圧、身体疾患、併用薬などを踏まえて判断します。

カルテオロールの副作用

カルテオロールでは、
β受容体を遮断する作用に関連して
徐脈、低血圧、めまいなどが生じることがあります。

種類 主な副作用
循環器 めまい、ふらつき、立ちくらみ、徐脈、動悸、息切れ、低血圧など
精神・神経系 頭痛、頭重感、眠気、不眠、振戦、抑うつ感など
消化器 腹部不快感、吐き気、下痢、腹痛、便秘など
呼吸器 呼吸困難、咳、痰、喘息様症状など
その他 倦怠感、脱力感、浮腫、疲労感、手足のしびれ、下肢冷感など

特に注意が必要な副作用

徐脈性不整脈・心不全・失神など重大な副作用として、
房室ブロック、洞不全症候群、洞房ブロック、洞停止などの
徐脈性不整脈
うっ血性心不全またはその悪化、冠攣縮性狭心症、
高度な徐脈に伴う失神などが報告されています。

服用後に著しく脈が遅くなる、
強いめまいや失神、息苦しさなどがみられた場合には、
自己判断で服用を続けず医療機関へ相談します。

カルテオロールを使用できない・注意が必要な場合

気管支喘息がある場合

気管支喘息・気管支痙攣のおそれがある方には使用できませんカルテオロールはβ1受容体だけではなく、
気管支拡張に関係するβ2受容体も遮断します。
そのため、気管支喘息や気管支痙攣のおそれがある患者では
喘息症状を誘発・悪化させる可能性があり、禁忌とされています。

その他、使用できない主な状態

カルテオロールは、以下のような場合にも使用できません。

  • 高度の徐脈がある場合
  • Ⅱ度・Ⅲ度房室ブロック、洞不全症候群、洞房ブロックがある場合
  • 心原性ショックがある場合
  • 肺高血圧による右心不全がある場合
  • うっ血性心不全がある場合
  • 低血圧症がある場合
  • 糖尿病性ケトアシドーシス・代謝性アシドーシスがある場合
  • 未治療の褐色細胞腫・パラガングリオーマがある場合
  • 妊娠中または妊娠している可能性がある場合

糖尿病がある場合

β遮断薬は、
低血糖時にみられる頻脈などの交感神経症状を
分かりにくくすることがあります。
また、低血糖からの回復を遅らせる可能性もあります。

インスリンや血糖降下薬を使用している場合には、
血糖値を含めて慎重に経過を確認します。

腎機能や肝機能が低下している場合

カルテオロールは主に腎臓から排泄されるため、
重い腎機能障害では副作用が生じやすくなる可能性があります。

また、主としてCYP2D6によって代謝されるため、
重い肝機能障害がある場合にも薬物代謝の遅延に注意が必要です。

併用に注意する薬

カルテオロールは、
心拍数や血圧、血糖などに影響する薬剤との併用で
作用が強くなることがあります。

薬剤 主な注意点
ベラパミル・ジルチアゼム 徐脈、房室ブロック、心不全などが起こりやすくなることがあります。
ジギタリス製剤 徐脈や房室ブロックなどの刺激伝導障害に注意します。
Ⅰ群抗不整脈薬 心機能抑制が強くなる可能性があります。
インスリン・血糖降下薬 低血糖作用が強くなるほか、低血糖症状が分かりにくくなることがあります。
クロニジン・グアナベンズ 中止時のリバウンド現象が増強する可能性があり、中止順序を含めて調整が必要です。
他の降圧薬・硝酸薬 血圧低下作用が強くなることがあります。

カルテオロールは急にやめてもよい?

長期間服用しているカルテオロールを
自己判断で突然中止することは避けます。

中止する場合は徐々に減量しますβ遮断薬を急に中止すると、
交感神経系の反応が強まり、
狭心症などの循環器症状が悪化する可能性があります。
休薬が必要な場合には、
医師の管理のもとで徐々に減量しながら経過を確認します。

抗精神病薬によるアカシジア対策として使用している場合には、
カルテオロールだけでなく、
原因となっている抗精神病薬の治療方針も含めて調整します。

よくある質問

カルテオロールは抗不安薬ですか?

一般的な意味での抗不安薬ではありません。
カルテオロールはβ受容体を遮断し、
動悸や頻脈など交感神経活動に伴う身体反応を抑える薬です。
不安や恐怖といった心理症状そのものに対しては、
病態に応じて別の治療を検討します。

カルテオロールの半減期はどのくらいですか?

健康成人への単回経口投与では、
血中半減期は約5時間です。
ただし、半減期は血液中の薬物濃度が半分になるまでの時間を示す指標であり、
5時間で薬の作用が完全になくなるという意味ではありません。

カルテオロールはどのくらいで効きますか?

健康成人への単回投与では、
血中濃度は約1時間で最高になります。
ただし、最高血中濃度に達する時間と
実際に症状が改善するまでの時間は同じではありません。
使用目的や症状によって効果の現れ方は異なります。

アカシジアに正式に承認されている薬ですか?

いいえ。
カルテオロールの国内承認適応にアカシジアは含まれておらず、
アカシジアに使用する場合は適応外使用となります。
β遮断薬による改善効果は研究されていますが、
原因となる抗精神病薬の減量・変更が可能かを検討することも重要です。

喘息があってもカルテオロールを飲めますか?

カルテオロールはβ2受容体も遮断するため、
気管支喘息や気管支痙攣のおそれがある患者には禁忌です。
喘息の既往がある場合には必ず処方医へ伝える必要があります。

カルテオロールは急にやめても大丈夫ですか?

自己判断で突然中止することは避けます。
休薬が必要な場合には、
医師の指示のもとで徐々に減量しながら経過を確認します。

まとめ

カルテオロール塩酸塩(ミケラン)は、
β1・β2受容体を遮断する
非選択的β遮断薬です。
狭心症、心臓神経症、不整脈、本態性高血圧症に承認されており、
ISA(内因性交感神経刺激様作用)を持つことが
薬理学的な特徴です。

ミケラン錠では、
健康成人への単回投与後およそ1時間で最高血中濃度に達し、
血中半減期は約5時間です。
また、投与量の約70%が未変化体として尿中に排泄されます。

精神科領域では、
抗精神病薬によるアカシジアに対してβ遮断薬が使用されることがあり、
カルテオロールも選択肢となる場合があります。
ただし、
アカシジアへの使用は適応外であり、
カルテオロール固有のエビデンスも限られています。

アカシジアが疑われる場合には、
症状を抑える薬を追加するだけでなく、
原因となった抗精神病薬の減量や変更が可能かを検討することが重要です。

執筆者
執筆者プロフィール

ライトメンタルクリニック 渋谷院 院長

清水聖童 (Seido Shimizu)

精神保健指定医 / 日本精神神経学会認定専門医 / 認知症サポート医 / コンサータ処方登録医

引用・参考文献

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・大塚製薬株式会社. ミケラン錠5mg 医薬品インタビューフォーム.
・井上猛, 桑原斉, 酒井隆, 鈴木映二, 水上勝義, 宮田久嗣, 諸川由実代, 吉尾隆, 渡邉博幸 編. こころの治療薬ハンドブック 第16版. 星和書店; 2026.
・樋口輝彦, 市川宏伸, 神庭重信, 朝田隆, 中込和幸 編. 今日の精神疾患治療指針 第2版. 医学書院; 2016.
・姫井昭男. 精神科の薬がわかる本 第5版. 医学書院; 2024.
・Furukawa Y, Imai K, Takahashi Y, Efthimiou O, Leucht S. Comparative Efficacy and Acceptability of Treatment Strategies for Antipsychotic-Induced Akathisia: A Systematic Review and Network Meta-analysis. Schizophr Bull. 2026;52(2):sbae098.
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