メンタルヘルスコラム

【精神科専門医解説】四逆散(シギャクサン)の効果・作用機序・副作用|不安・抑うつ・ストレス性身体症状への使い方

  • 更新日:2026.09.19
  • 公開日:2026.09.19

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四逆散(しぎゃくさん)は、
柴胡(サイコ)・芍薬(シャクヤク)・枳実(キジツ)・甘草(カンゾウ)という
4種類の生薬から構成される漢方薬です。

精神科・心療内科では、単に「不安がある」「気分が落ち込んでいる」というだけではなく、
精神的な緊張やストレスが、胃の不快感、腹部の張り、筋肉のこわばり、発汗などの身体症状として現れている場合
に処方を検討することがあります。

四逆散は代表的な柴胡剤の一つです。
なかでも構成生薬が4種類と非常にシンプルで、
漢方臨床では経験的に
「処方の輪郭が分かりやすい」「合う患者では切れ味がよい」
と表現されることがあります。

ただし、
「4生薬だから即効性が高い」という薬理学的根拠が確立しているわけではありません。
本記事では、こうした伝統的・経験的な使われ方と、
現代医学によって確認されている知見を分けながら解説します。

この記事のポイント:
四逆散は「不安を抑える漢方」とだけ覚えるより、
心理的ストレス+胸腹部の張り・胃腸症状+身体の緊張
という心身のつながりを見る処方として理解すると、精神科臨床で位置づけやすくなります。

四逆散とは?

四逆散は古典『傷寒論』を原典とする漢方処方で、
医療用製剤としては
ツムラ四逆散エキス顆粒(医療用:TJ-35)
などが使用されています。

一般名
四逆散(シギャクサン)
代表的な医療用製剤
ツムラ四逆散エキス顆粒(TJ-35)
構成生薬
柴胡・芍薬・枳実・甘草
通常の成人用量
1日7.5gを2~3回に分割
服用時期
食前または食間
甘草含有量
1日量中1.5g

ツムラ四逆散の4つの生薬

生薬 1日量中 四逆散での臨床的な捉え方
柴胡 5.0g 柴胡剤の中心となる生薬。精神的ストレス、緊張、胸脇部の張りなどを考える際の軸になります。
芍薬 4.0g 筋緊張、腹直筋の張り、痙攣性疼痛など身体側の緊張を考える生薬です。
枳実 2.0g 胸腹部の膨満感や「つかえ」「張り」を伴う状態を考える際に用いられます。
甘草 1.5g 処方全体を調整するとともに芍薬との組み合わせも特徴的です。一方、偽アルドステロン症には注意が必要です。
四逆散と四逆湯は別の漢方薬です

名称が似ていますが、
四逆散・四逆湯・当帰四逆加呉茱萸生姜湯は別の処方です。
四逆散には附子は含まれていません。

精神科医が知っておきたい「柴胡」とは?

四逆散を精神科で理解するとき、
最も教育的なポイントの一つが柴胡(さいこ)です。

柴胡を主要な構成生薬として含む処方は、まとめて
「柴胡剤」と呼ばれることがあります。
ただし、これはSSRIや抗精神病薬のような現代薬理学上の薬剤分類ではなく、
漢方処方を理解するための処方群です。

代表的な柴胡剤には、四逆散のほか、
小柴胡湯、大柴胡湯、
柴胡加竜骨牡蛎湯
などがあります。

柴胡を「抗ストレス生薬」とだけ覚えない

精神科医にとって柴胡を理解する際、
単純に「抗ストレス作用がある生薬」と覚えてしまうと、
漢方臨床で何を見て処方しているのかが分かりにくくなります。

伝統的には柴胡剤では、
胸脇苦満と呼ばれる肋骨弓下から心窩部にかけての抵抗感や圧痛、
精神的な緊張、イライラ、抑うつ感、
ストレスに連動する身体症状などを組み合わせて評価してきました。

現代精神医学に置き換えるなら、
柴胡剤は
「心理的ストレスが身体反応と強く結びついている患者をどう見るか」
という視点を提供する処方群と考えると理解しやすくなります。

精神科的にイメージすると

仕事や対人関係のストレスを抱え、
「言いたいことを言えない」「緊張が抜けない」「イライラする」と感じながら、
胃が締めつけられる、腹部が張る、身体に力が入る――。

漢方臨床では、このような
感情・ストレス反応と身体的な「張り」が同時に存在する状態
を柴胡剤の処方像として捉えることがあります。

柴胡に含まれるサイコサポニン

柴胡には、
サイコサポニン(saikosaponins)
と呼ばれるトリテルペンサポニン類が含まれています。

saikosaponin Aやsaikosaponin Dなどについては、
前臨床研究で
HPA axis(視床下部―下垂体―副腎系)、
神経炎症、酸化ストレス、神経可塑性、
BDNF関連経路などとの関連が研究されています。

前臨床研究とヒトでの治療効果は分けて考える

これらの研究から
「柴胡がセロトニンを増やす」
「柴胡がHPA axisを正常化する」
と患者さんに断定することはできません。

柴胡・サイコサポニンの精神神経作用については、
現在も基礎研究・前臨床研究が中心
であることに注意が必要です。

4生薬であることにはどんな意味がある?

漢方薬には10種類以上の生薬から構成されるものもありますが、
四逆散は柴胡・芍薬・枳実・甘草の4種類だけで構成されています。

このシンプルな処方構造は、
四逆散がどのような状態を狙っているのかを理解しやすくしています。

柴胡・枳実
精神的・胸腹部の張り

+
芍薬・甘草
筋・身体の緊張

→
心身の「張り」
を一つの処方像として捉える

漢方臨床では、この単純な構成から
「合う患者では切れ味がよい」
「効果判定が比較的しやすい」
と経験的に表現されることがあります。

ただし「4生薬だから即効性がある」とは言えません。
生薬数が少ないほど吸収が速い、あるいは治療効果が早く現れるという
薬物動態学的・臨床試験上の根拠は確立していません。
「切れ味」は、あくまで漢方臨床で経験的に使われてきた表現です。

四逆散の効能・効果

ツムラ四逆散エキス顆粒の電子添文では、
「比較的体力のあるもので、大柴胡湯証と小柴胡湯証との中間証を表わすもの」
に対する、
胆嚢炎、胆石症、胃炎、胃酸過多、胃潰瘍、鼻カタル、気管支炎、
神経質、ヒステリー
が効能・効果として記載されています。

「ヒステリー」は現在の診断名ではありません

電子添文に残る「ヒステリー」は歴史的な医学用語です。
現在のDSM・ICDにおける特定の精神疾患と1対1で対応する診断名ではありません。

現在の精神科では、
不安症群、
うつ病、
適応障害、
身体症状症
などをそれぞれ診断・評価したうえで治療方針を考えます。

四逆散の作用機序

四逆散は複数の生薬・化学成分から構成されるため、
一般的な向精神薬のように
「一つの受容体を刺激する」「一つのトランスポーターを阻害する」
という単一の作用機序では説明できません。

四逆散の作用機序。柴胡・枳実・芍薬・甘草と中枢ストレス応答、胃腸、筋緊張との関連を示した図
四逆散の作用機序のイメージ。中枢神経系への作用には前臨床研究を含みます。
電子添文上で確認されている薬効薬理は、主として胃粘膜保護・活性酸素消去・プロトンポンプ活性阻害などです。

1.胃粘膜保護・抗潰瘍作用

電子添文では、ラットにおいて
胃粘膜障害や胃粘膜の酸化ストレスに関連する指標を抑制したことが報告されています。

2.活性酸素消去作用

in vitro研究では、
四逆散に活性酸素消去作用が認められています。

ただし、
この作用だけから精神症状への効果を説明することはできません。

3.胃のH+,K+-ATPaseへの作用

ブタ胃粘膜由来のH+,K+-ATPaseに対する
酵素活性阻害作用も報告されています。

四逆散に胃炎、胃酸過多、胃潰瘍が効能として含まれていることを考えるうえで、
興味深い薬理作用です。

4.抗不安様作用は研究されている

マウスを用いた研究では、
四逆散エキスに弱い抗不安様作用が報告されています。

同研究ではジアゼパムと異なり自発運動量の明らかな低下を認めず、
四逆散に含まれるナリンギンなどの成分も検討されています。

ただし、これは動物実験です。
ヒトの不安症に対する有効性を証明した試験ではありません。

精神科ではどのような患者に使われる?

精神科・心療内科で四逆散を考える際には、
診断名だけでなく
精神症状と身体症状がどのようにつながっているか
をみます。

症状・所見 四逆散を考える際の臨床像
不安・緊張 心配だけでなく、身体にも力が入り、胃や腹部の症状を伴う
イライラ 怒りを爆発させるというより、緊張や感情を抱え込む
抑うつ 気分の落ち込みに身体的な緊張や胃腸症状を伴う
胃腸症状 ストレスで胃痛、腹部膨満、みぞおちのつかえなどが悪化する
筋緊張 腹直筋、肩、身体全体に力が入り、こわばりやすい
発汗など 精神的緊張とともに手掌・顔面などの発汗が目立つことがある

「言いたいことを言えず、うっ積している患者」という経験的な処方像

漢方診療では、四逆散が合う患者について、
「言いたいことを言えず、ストレスが内側にたまっている」
と表現されることがあります。

これは非常に覚えやすい臨床表現ですが、
精神医学的に検証された人格分類ではありません。

「文句を言えない性格だから四逆散」と機械的に処方するのではなく、
心理的ストレス+胸腹部症状+身体的緊張
が重なる患者像として理解するとよいでしょう。

不安症・パニック症と四逆散

不安症については
不安症群、
持続する心配や筋緊張については
全般性不安症
をご参照ください。

精神科臨床で四逆散を考えたくなる特徴的なパターンの一つに、
不安と胃腸症状が連動する患者があります。

たとえば、
「まず胃をつかまれるような感じがする」
「みぞおちが締めつけられる」
「胃がムカムカして、その後に動悸や不安が強くなる」
といった経過です。

これは
パニック症
の患者さんの一部でもみられることがあります。

パニック発作の頓服薬として確立しているわけではありません

漢方臨床では、四逆散を定期処方として用いるほか、
身体的な予兆が出現したタイミングで頓用に近い使い方をすることがあります。

しかし、
四逆散の頓服でパニック発作を予防・中断できることを示す十分な比較試験はありません。
これは経験的な処方運用として区別する必要があります。

パニック症やその他の不安症では、
症状と重症度に応じて薬物療法や
認知行動療法(CBT)
など、エビデンスの確立した治療を組み合わせます。

抑うつ症状・うつ病への研究

四逆散は、抑うつ症状についても研究が行われています。

2022年 MDD試験
36例
パロキセチン+Sini powder、4週間
2026年 乳がん+軽~中等度抑うつ
53例完遂
プラセボ対照クロスオーバー試験

大うつ病性障害を対象とした小規模RCT

2022年には、
大うつ病性障害36例を対象としたランダム化二重盲検比較試験が報告されています。

パロキセチン治療にSini powderを併用した群では、
4週間の治療中に概日リズム関連指標の改善がみられ、
HAMD-24についても群と時間の交互作用が報告されました。

一方、症例数は36例と小さく、
四逆散単独療法の試験ではありません。

2026年の乳がん患者を対象とした試験

2026年には、軽度~中等度の抑うつを伴う乳がん患者を対象とした
ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験が報告され、
53例が試験を完遂しました。

Si-Ni-San投与時にはプラセボと比較して
HAMD-24の改善が報告されています。

海外のSini-Sanと日本のTJ-35をそのまま同一視しない

これらの研究で使用されたSini powder / Si-Ni-Sanは、
日本の医療用ツムラ四逆散エキス顆粒と
生薬量、調製法、製剤条件が同一とは限りません。

したがって現段階では、
「うつ病への効果が確立した漢方薬」ではなく、
抑うつに対する臨床研究が存在する処方

と位置づけるのが妥当です。

うつ病そのものについては
うつ病とは
もご参照ください。
中等症以上のうつ病や希死念慮、著しい機能低下などがある場合には、
標準的な精神科治療を優先します。

ストレス性の発汗にも使われる?

伝統的な四逆散の処方像では、
手掌などの発汗が随伴所見として挙げられることがあります。

2023年には、外出や人混みなどのストレスによって
頭部・顔面・手掌に強い発汗を生じていた患者に対して
四逆散が奏効した症例報告もあります。

これは症例報告レベルのエビデンスです。
四逆散が原発性局所性多汗症の標準治療であることを意味するものではありません。
発汗だけで処方を決めず、不安・緊張、胸腹部症状、腹診所見などを合わせて評価します。

頻尿など自律神経症状について

漢方臨床では、精神的緊張とともに頻尿などの自律神経症状を訴える患者に
四逆散が経験的に検討されることがあります。

ただし、
頻尿は四逆散の電子添文上の効能・効果ではありません。
尿路感染症、糖尿病、過活動膀胱、薬剤性など、
身体疾患を適切に評価することが先決です。

四逆散の「証」―腹診で何を見る?

電子添文では、
四逆散は「比較的体力のあるもの」が対象として示されています。

胸脇苦満

胸脇苦満(きょうきょうくまん)は、
肋骨弓下から心窩部周辺に抵抗感や圧痛を認める腹診所見です。
柴胡剤を考える際の伝統的な手がかりの一つです。

腹直筋の緊張

四逆散では、
腹直筋が張っている、腹壁に力が入っているといった所見も
経験的な処方選択の参考になります。

腹診所見は「診断検査」ではありません

胸脇苦満や腹直筋緊張は、
うつ病や不安症を診断するためのバイオマーカーではありません。

精神医学的診断、身体疾患、重症度、服薬状況などを評価したうえで、
追加の臨床情報として利用することが重要です。

他の漢方薬との違い

漢方薬 精神科でイメージしやすい特徴
四逆散 精神的な緊張+胸腹部の張り+胃腸症状+身体のこわばり。
ストレスを「内側にためる」ような臨床像で経験的に検討。

柴胡加竜骨牡蛎湯
不安、焦燥、いらだち、不眠、動悸など、
精神的な高ぶりと身体症状が重なる場合。

抑肝散
易怒性、興奮、神経過敏、怒りっぽさ、不眠など
「神経の高ぶり」が前景に立つ場合。

半夏厚朴湯
不安や緊張に、喉のつかえ、胸部違和感、吐き気などを伴う場合。

同じ「不安」「イライラ」であっても、
どの身体症状が一緒に出ているのかによって
漢方処方の考え方は異なります。

四逆散はどのくらいで効果を判断する?

四逆散について、
精神症状に対する効果発現までの日数が
大規模臨床試験によって確立されているわけではありません。

一方、漢方臨床では
「合う場合には比較的早く変化が分かる」と経験的に語られることがあります。

当院での実践的な初期評価
症状や治療目的によりますが、
2~3週間程度を一つの初期評価時期として、
不安・緊張、イライラ、抑うつ、睡眠、胃腸症状、
筋緊張、発汗などがどのように変化したかを確認します。

これは「2~3週間で必ず効く」という意味ではありません。

電子添文でも、
経過を十分に観察し、
症状・所見の改善が認められない場合には
継続投与を避けることが求められています。

用法・用量

ツムラ四逆散エキス顆粒(医療用)の通常成人量
通常、成人1日7.5gを2~3回に分け、
食前または食間に経口投与します。
年齢、体重、症状により適宜増減します。

「食間」とは?

食事をしている最中ではなく、
食事と食事の間を意味します。

水または白湯で服用するのが一般的です。
飲み忘れた場合に、自己判断で2回分をまとめて服用しないようにしてください。

四逆散の副作用

漢方薬も医薬品であり、
天然由来だから副作用がないわけではありません。

四逆散で特に重要なのは、
甘草による偽アルドステロン症・低カリウム血症・ミオパチー
です。

偽アルドステロン症
低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、体重増加、
ナトリウム・体液貯留などがみられることがあります。

ミオパチー
低カリウム血症に伴って、
脱力感、筋力低下、四肢の痙攣・麻痺などが現れることがあります。

四逆散は甘草1.5gだから安全?

ツムラ四逆散の通常成人1日量7.5gには、
甘草1.5gが含まれます。

甘草含有量2.5g/日以上は、
偽アルドステロン症のリスクを考える際に
実務上重要な目安として扱われてきました。

「2.5g未満=安全」ではありません

2.5g/日は
安全域と危険域を分ける閾値ではありません。

近年のレビューでは、
甘草量だけではリスクを十分に説明できず、
年齢、腎機能、生理的予備力、アルブミン、
腸内細菌による代謝の個人差なども関与すると考えられています。

したがって、四逆散が甘草1.5g/日だからといって
偽アルドステロン症を無視してよいわけではありません。

複数の漢方薬を併用するときが重要

電子添文では、
芍薬甘草湯、補中益気湯、
抑肝散
など、甘草を含む製剤との併用に注意するよう記載されています。

別々の漢方薬を処方していても、
甘草という同じ生薬が重複することがあります。

精神科では漢方薬が長期間継続されることがあります。
処方名だけではなく、「総甘草量」を確認する
という視点が重要です。

採血は必要?

電子添文では、
四逆散には甘草が含まれているため、
血清カリウム値や血圧に十分留意すること
とされています。

すべての患者さんに一律の間隔で採血を行うという統一基準があるわけではありません。

一方で、長期使用、高齢者、腎機能低下、
利尿薬など低カリウム血症を起こしやすい薬剤の使用、
甘草含有製剤の併用、
浮腫・血圧上昇・脱力感などがある場合には、
血清カリウムや腎機能などを確認する意義が高くなります。

妊娠・授乳中、高齢者、小児での使用

妊娠中

妊婦または妊娠している可能性がある場合は、
治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に使用します。

授乳中

治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮し、
授乳を継続するか中止するかを個別に検討します。

小児

小児等を対象とした臨床試験は実施されていません。

高齢者

高齢者では一般に生理機能が低下しているため、
減量するなど慎重に使用します。

四逆散だけで不安やうつ病を治療できる?

四逆散は、
不安・緊張・抑うつなどと身体症状が重なった患者さんで
治療選択肢の一つになることがあります。

しかし、
現在の不安症やうつ病に対する標準治療を
四逆散だけで置き換えるものではありません。

症状の種類と重症度に応じて、
抗うつ薬などの薬物療法、
認知行動療法(CBT)
をはじめとする心理療法、
睡眠・生活環境・ストレス要因の調整などを組み合わせます。

当院で行っている治療全体については
精神科・心療内科|治療・支援から探す
をご覧ください。

診断名がまだ分からない方は
精神科・心療内科|総合案内
や
疾患・特性から探す
も参考になります。

不安症やパニック症について専門的な診療を希望される場合は、
強迫症・不安症専門外来
についてもご覧ください。

よくある質問

四逆散は不安に効きますか?

医療用四逆散には「神経質」が効能として含まれています。
精神科では、不安・緊張に胃腸症状や身体的な緊張が重なる患者さんで使用を検討することがあります。
一方、不安症に対するSSRIや認知行動療法と同程度のエビデンスが確立しているわけではありません。

四逆散はうつ病にも使いますか?

抑うつ症状については小規模なランダム化比較試験が報告されています。
ただし、日本ではうつ病そのものは承認された効能ではなく、
海外のSini-Sanと日本の医療用TJ-35の製剤条件も同一ではありません。
標準治療を置き換える薬ではなく、症状や身体所見をみながら補助的に検討します。

「4生薬だから即効性がある」のですか?

そのような臨床的エビデンスはありません。
四逆散は構成がシンプルなため、漢方臨床では「処方像が明瞭」「切れ味がよい」と経験的に表現されることがありますが、
4生薬であること自体が即効性を証明するものではありません。

パニック発作が来そうなときに頓服できますか?

臨床上、胃の締めつけなど身体的な予兆を伴う患者で頓用に近い使われ方をすることはあります。
しかし、四逆散の頓服でパニック発作を止められることが確立しているわけではありません。
主治医と服用方法を相談してください。

手汗にも使いますか?

ストレス性の頭部・顔面・手掌発汗に四逆散が奏効した症例報告があります。
ただし症例報告レベルであり、多汗症の標準治療ではありません。

甘草が1.5gなら低カリウム血症は心配ありませんか?

リスクはゼロではありません。
甘草2.5g/日は注意を強める一つの目安ですが、安全性を保証する境界値ではありません。
特に長期使用、高齢者、腎機能低下、甘草含有製剤の併用などでは注意が必要です。

効果はいつ評価しますか?

精神症状に対する明確な効果発現日数は確立していません。
当院では症状に応じて、まず2~3週間程度を一つの初期評価時期として、
不安、緊張、胃腸症状、筋緊張などの変化を確認します。
改善が乏しい場合には漫然と継続せず、処方や診断を再評価します。

まとめ

四逆散は、
柴胡・芍薬・枳実・甘草という4種類の生薬
から構成されるシンプルな柴胡剤です。

精神科・心療内科では、
不安、緊張、抑うつ、イライラなどの精神症状に加えて、
胃腸症状、胸腹部の張り、腹直筋や身体の緊張、発汗などが重なる場合に
処方を検討することがあります。

精神科医にとって重要なのは、
柴胡を単なる「抗ストレス生薬」と覚えるのではなく、
心理的ストレスと身体反応を一続きに評価する柴胡剤の考え方
を理解することです。

四逆散は漢方臨床で
「切れ味がよい」と経験的に表現されることがありますが、
4生薬だから即効性が高いことが証明されているわけではありません。
経験的な処方像と現代的エビデンスを区別して使用することが重要です。

安全面では、
甘草1.5g/日を含むことに注意します。
偽アルドステロン症、低カリウム血症、ミオパチーを念頭に置き、
他の漢方薬との甘草重複、血圧、浮腫、筋力低下、血清カリウムなどを確認しながら使用します。

執筆者
執筆者 清水聖童

ライトメンタルクリニック 渋谷院 院長

清水聖童 (Seido Shimizu)

精神保健指定医 / 日本精神神経学会認定専門医 / 認知症サポート医 / コンサータ処方登録医

引用・参考文献

・独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). ツムラ四逆散エキス顆粒(医療用)電子添文. 2023年12月改訂.

・株式会社ツムラ. ツムラ四逆散エキス顆粒(医療用)医薬品インタビューフォーム.

・Tanaka M, Satou T, Koike K. Anxiolytic-like effect of Shigyakusan extract with low side effects in mice. J Nat Med. 2013;67(4):862-866. doi:10.1007/s11418-013-0746-3.

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・姫井昭男. 精神科の薬がわかる本 第5版. 医学書院; 2024.

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