メンタルヘルスコラム

来談者中心療法(CCT)とは|特徴・進め方・向いている方を解説

  • 更新日:2026.09.30
  • 公開日:2026.09.30

はじめに

来談者中心療法は、
相談する方自身の感じ方や考えを大切にしながら、
対話を通して気持ちや価値観を整理していく心理療法です。
「クライエント中心療法」とも呼ばれます。

カウンセラーがすぐに答えや解決策を示すのではなく、
安心して話せる関係の中で、
自分でもまだ十分に言葉にできていなかった気持ちを少しずつ整理し、
自分自身への理解を深めていくことを重視します。

来談者中心療法とは

来談者中心療法は、
アメリカの心理学者カール・ロジャーズによって提唱された心理療法です。

「こう考えるべき」
「この方法が正しい」
とカウンセラーが一方的に方向を決めるのではなく、
相談する方がどのように感じ、
何を大切にしているのかを丁寧に確かめながら対話を進めます。

話しているうちに、
漠然としていた気持ちが言葉になったり、
自分が本当に困っていたことや、
大切にしたい価値観が見えてきたりすることがあります。

治療法

来談者中心療法
別名

クライエント中心療法
英語

Client-Centered Therapy(CCT)
提唱者

カール・ロジャーズ
主な焦点

感情・価値観・自己理解
進め方

対話を中心に、その人のペースで進める
来談者中心療法のカウンセリングイメージ
カウンセラーとの対話を通して、
まだ言葉になっていない気持ちや考えを整理していきます。

来談者中心療法をひと目でみる

来談者中心療法では、
カウンセラーが相談者に代わって答えを決めるのではなく、
対話を通して自分自身への理解を深めることを大切にします。


01|答えを決めつけない

「こうすべき」と結論を押しつけるのではなく、
その人自身がどのように感じているかを丁寧に扱います。


02|気持ちを言葉にする

まだ整理されていない気持ちや、
うまく説明できない違和感についても、
対話の中で少しずつ言葉にしていきます。


03|自分で方向性を選ぶ

自分自身への理解を深めながら、
自分にとって納得できる選択や方向性を考えていきます。


カウンセラーから「正解」をもらうことより、
自分自身の中にある考えや気持ちを確かめていく

来談者中心療法では、
相談する方自身が持っている力や可能性を尊重しながら、
自己理解を深めていくことを大切にします。

カウンセラーは「答えを出す人」ではありません

来談者中心療法では、
カウンセラーが専門家として相談者を一定の方向へ動かすことよりも、
安心して自分自身について考えられる関係をつくることを重視します。


中心にしないこと

× 正解や結論を一方的に決める

× カウンセラーが望む方向へ誘導する

× 気持ちを良い・悪いで評価する


大切にすること

○ その人自身の感じ方を受け止める

○ 気持ちを言葉にすることを支える

○ 一緒に考えながら確かめていく


「何も言わずに聞いているだけ」という意味ではありません

来談者中心療法では、
相談する方の言葉や感情を丁寧に受け止めながら、
カウンセラーも理解したことを言葉にして返し、
一緒に体験を確かめていきます。

その対話を通して、
相談する方自身が自分の気持ちや考えに気づきやすくなることを目指します。

対話の中で、自分への理解が深まっていく

話すことそのものだけが目的なのではありません。
言葉にしてみることで、
自分の感じ方や価値観が少しずつ明確になっていくことがあります。


01|話してみる

今感じていることを、
まだまとまっていなくても話してみます。


02|言葉になっていく

漠然としていた感情や考えが、
対話を重ねる中で少しずつ整理されていきます。


03|理解が深まる

自分が何を感じ、
何を大切にしているのかが見えやすくなります。


04|方向性が見えてくる

自分自身への理解をもとに、
自分にとって納得できる選択や今後の方向性を考えていきます。

来談者中心療法の基本的な考え方

来談者中心療法では、
特定の技法を使うことだけではなく、
カウンセラーと相談する方との関係そのものを大切にします。

その中心となるのが、
「自己一致」「無条件の肯定的関心」「共感的理解」
という3つの態度です。


01|ありのままに、誠実に関わる

自己一致

カウンセラー自身の内面と、
表面的な関わり方との間に大きなずれがないことを大切にします。

専門家として構えすぎるのではなく、
一人の人間として誠実に関わります。


02|評価や条件をつけずに受け止める

無条件の肯定的関心

「そう考えるのは間違い」
「こう感じるべき」
と評価するのではなく、
その人が今どのように体験しているかを大切にします。

これは、
すべての行動を無条件に肯定するという意味ではありません。


03|相手の立場から理解しようとする

共感的理解

カウンセラー自身の価値観だけで判断せず、
相談する方が出来事をどのように感じ、
どのような意味を持たせているのかを理解しようとします。

理解した内容を言葉や態度で伝え返しながら、
相談する方自身の自己理解につなげていきます。


安心して自分自身について考えられる関係をつくる

自己一致、
無条件の肯定的関心、
共感的理解という3つの態度を通して、
評価されることを過度に意識せず、
自分の気持ちや考えを見つめやすい関係をつくることが
来談者中心療法の基盤になります。

来談者中心療法が向いている方

来談者中心療法は、
特定の診断だけを対象とする方法ではありません。

気持ちを整理したいとき、
自分自身についてもう少し理解したいとき、
人間関係や今後の生き方について考えたいときなどに
取り組みやすい心理療法です。

自分の気持ちをうまく言葉にできず考えているイメージ


01|気持ちを整理したい

「何に悩んでいるのか、
自分でもうまく説明できない」
ということがあります。

漠然としたつらさや違和感を、
話せるところから少しずつ言葉にし、
自分の中で整理していきます。

これからの方向性について考えているイメージ


02|自分の価値観や方向性を考えたい

「これからどうしたいのか、
自分でもよくわからない」
という場合があります。

仕事、進路、家族、人間関係などについて、
誰かに結論を決めてもらうのではなく、
自分が何を大切にしたいのかを一緒に整理します。

人間関係を振り返っているイメージ


03|人間関係を振り返りたい

「人との関係で、
似たような悩みを繰り返している気がする」
という場合があります。

相手の行動だけでなく、
その場面で自分が何を感じ、
どのように関わっていたのかを振り返ります。

自分自身と向き合い自己理解を深めるイメージ


04|自分自身への理解を深めたい

「自分を責めたり、
否定したりしてしまうことが多い」
という方にも向いています。

「こうあるべき」という基準だけで自分を見るのではなく、
実際に感じていることや考えていることを丁寧に見つめていきます。

相談内容によって、心理療法を選び分けます

相談内容に応じて心理療法を検討するイメージ


具体的な対処法を身につけたい場合には、別の心理療法が適することもあります

たとえば、
「特定の場面で起こる不安にどう対応するか学びたい」
「考え方や行動のパターンを具体的に変えたい」
といった治療目標が明確な場合には、
認知行動療法(CBT)など、
より構造化された心理療法が適していることがあります。

相談したい内容や希望を確認しながら、
適した方法を検討します。

来談者中心療法と他の心理療法の違い

心理療法には、
それぞれ重視することや進め方に違いがあります。

どの心理療法が一律に優れているというものではなく、
何について相談したいのか、
どのような形で取り組みたいのかによって、
選択するアプローチは変わります。

横にスクロールして比較できます →

心理療法 主に重視すること 進め方 相談のイメージ
来談者中心療法
CCT
感情・価値観・自己理解
自分自身の体験を理解し、
納得できる方向性を探していきます。
対話を中心に進める
話したいことを大切にし、
その人のペースで進めます。
「まず、自分の気持ちを整理したい」

認知行動療法
CBT
認知・感情・行動の関係
問題を整理し、
具体的な対処や変化につなげます。
比較的構造化して進める
目標やテーマを設定し、
記録や練習を取り入れることがあります。
「具体的な問題への対処法を身につけたい」

力動的精神療法
葛藤・感情・対人関係のパターン
自分では気づきにくいこころの動きや、
繰り返される関係性を理解します。
体験や関係性を振り返る
過去と現在とのつながりを考えながら、
心理的なパターンへの理解を深めます。
「なぜ同じ悩みを繰り返すのか知りたい」

対人関係療法
IPT
現在の対人関係と症状
人間関係上の出来事と
心の状態との関連を整理します。
対人関係の課題を焦点化する
取り組むテーマを整理し、
比較的構造的に進めます。
「人間関係の変化と気分の問題を整理したい」

EMDR
苦痛を伴う記憶や体験
現在にも影響している
つらい体験や記憶を扱います。
一定の手順に沿って進める
両側性刺激などを用いながら、
記憶の処理を進めます。
「過去の体験が今も強く影響している」

対象や目的が明確な心理支援

個人の気持ちや考えを中心に扱う心理療法とは別に、
特定の関係性や課題を対象として行う心理支援もあります。


01|カップル療法

パートナーとの関係やコミュニケーションを、
二人の関係性という視点から整理していきます。


02|家族療法

一人だけの問題として捉えるのではなく、
家族全体の関係や相互作用にも目を向けます。


03|ペアレント・トレーニング

子どもの行動や発達上の特徴への理解を深めながら、
保護者が実践できる具体的な関わり方を学びます。


04|CBT-OB

特定の課題や目標に焦点を当て、
認知行動療法の考え方を用いながら行動変容に取り組みます。


一つの心理療法だけに限定するとは限りません

実際のカウンセリングでは、
相談内容、
その時々の状態、
治療目標や希望を踏まえて進めます。

対話を大切にしながら、
必要に応じて別の心理療法の考え方や支援方法を取り入れることもあります。

来談者中心療法の流れ

最初から話したいことが整理されている必要はありません。
今気になっていることや、
そのときに浮かんでいることから、
自分のペースで話していきます。

横にスワイプして治療の流れを見る →

来談者中心療法で話したいことから話し始めるイメージ

STEP
1
話したいことから始める
今気になっていることや、
相談したいことから話します。
内容が整理されていなくても問題ありません。
何から話せばよいかわからない場合も、
そのとき浮かんでいることから進めていきます。

来談者中心療法で気持ちや考えを言葉にしていくイメージ

STEP
2
気持ちや考えを言葉にしていく
カウンセラーは話の内容だけでなく、
その背景にある気持ちも丁寧に受け止めながら対話します。
話していく中で、
曖昧だった感情や考えが少しずつ整理されていきます。

来談者中心療法で自分の感じ方や価値観に気づくイメージ

STEP
3
自分の感じ方や価値観に気づく
対話を重ねる中で、
「本当はこう感じていた」
「自分はこれを大切にしていた」
と気づくことがあります。
こうした気づきを自己理解につなげていきます。

来談者中心療法で自分なりの方向性を整理するイメージ

STEP
4
自分なりの方向性を整理する
自分自身への理解が深まることで、
これからどうしたいかを考えやすくなります。
変化を振り返りながら、
今後の方向性や継続・終了についても整理していきます。


毎回STEP 1から4へ順番に進むわけではありません

来談者中心療法は、
STEP1からSTEP4を順番に完了していくプログラムではありません。

その時々の気持ちや相談内容に応じて、
立ち止まったり、
以前のテーマへ戻ったりすることもあります。
相談する方自身のペースを大切にしながら進めます。

来談者中心療法についてよくある質問

何を話せばよいかわからなくても受けられますか?

はい。
相談したいことがはっきり決まっていなくても受けられます。

「何となくつらい」
「自分でも何に悩んでいるのかわからない」
という状態から、
話せることを少しずつ言葉にしていくことも大切な過程です。
最初からきれいに整理して話す必要はありません。

カウンセラーからアドバイスはもらえますか?

来談者中心療法では、
カウンセラーがすぐに答えや解決策を示すことを中心にはしません。

対話を通して、
自分が何を感じ、
何を大切にしているのかを整理しながら、
自分にとって納得できる方向性を考えていきます。

必要な情報提供や確認を行うことはありますが、
一方的に結論へ導くことを目的とした心理療法ではありません。

何回くらい受ける必要がありますか?

決められた回数はありません。

相談内容や目標によって、
数回で一区切りになる場合もあれば、
継続して自分自身について考えていく場合もあります。

経過や希望を確認しながら、
継続や終了について相談していきます。

認知行動療法(CBT)とどちらを受ければよいですか?

相談したい内容や、
心理療法で取り組みたいことによって異なります。

気持ちや価値観を整理し、
自己理解を深めたい場合には、
来談者中心療法が取り組みやすいことがあります。

一方、
具体的な問題への対処方法を身につけたい場合や、
考え方・行動のパターンをより具体的に変えていきたい場合には、
認知行動療法(CBT)が適していることがあります。

精神科・心療内科の診察を受けていなくても利用できますか?

希望する心理カウンセリングが決まっている場合には、
心理カウンセリングを直接予約することができます。

どの方法が適しているかわからない場合や、
症状について医師にも相談したい場合には、
精神科・心療内科の診察から相談することもできます。

当院で来談者中心療法を希望される方へ

来談者中心療法を含む心理カウンセリングは、
医師の診察を受けずに直接予約することもできます。

心理療法の選び方に迷っている場合や、
薬物療法を含めた治療全体について相談したい場合には、
精神科・心療内科の診察でご相談ください。

まとめ

来談者中心療法は、
カウンセラーが答えを一方的に示すのではなく、
安心できる対話の中で、
相談する方自身が気持ちや考えを整理していく心理療法です。

その基盤となるのが、
自己一致、
無条件の肯定的関心、
共感的理解という3つの態度です。

気持ちをうまく説明できないときや、
自分の価値観・人間関係・今後の方向性について考えたいときなどに、
自分自身への理解を深める方法として用いられます。

一方で、
具体的な対処方法や行動変容を主な目標とする場合には、
認知行動療法など別の方法が適していることもあります。

当院では、
相談内容や希望を確認しながら、
その方に合った心理療法や支援方法を検討します。

執筆者

執筆者

執筆者 清水聖童

医療法人社団燈心会 理事長
ライトメンタルクリニック 渋谷本院 院長

清水聖童 (Seido Shimizu)

精神保健指定医 /
日本精神神経学会認定精神科専門医 /
認知症サポート医 /
コンサータ・ビバンセ登録医

引用・参考文献

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