メンタルヘルスコラム

【精神科医専門医解説】グアンファシン(インチュニブ)の効果・作用機序・副作用|ADHD治療での使い方

  • 更新日:2026.09.25
  • 公開日:2026.09.20

はじめに

インチュニブ(一般名:グアンファシン塩酸塩)は、ADHD(注意欠如・多動症)の治療に用いられる非中枢刺激薬です。

ADHD治療薬には、コンサータやビバンセなどの中枢刺激薬と、ストラテラやインチュニブなどの非中枢刺激薬があります。その中でもインチュニブは、選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬という独特な作用機序を持っています。

ドパミンやノルアドレナリンを単純に増やす薬ではなく、主として前頭前皮質(PFC)の神経ネットワークに働き、注意、ワーキングメモリ、行動抑制、情動のトップダウン制御を支えると考えられています。

そのため臨床では、不注意だけでなく、衝動性、多動、イライラ、感情が急激に高ぶる、考える前に行動してしまうといった症状が前景にあるADHDで選択されることがあります。

一方で、眠気、血圧低下、徐脈、立ちくらみなどが起こることがあり、開始・増量だけでなく、休薬後の再開方法や中止方法まで含めて管理することが重要な薬です。

インチュニブのポイント
・ADHDに使用する非中枢刺激薬
・選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬
・不注意だけでなく、多動性・衝動性にも有効性が確認されている
・情動調整困難や反抗的・衝動的行動が目立つ症例で臨床的に選択されることがある
・不安症やうつ病そのものの治療薬ではない
・6歳以上の小児から成人まで国内承認がある
・1日1回の徐放錠
・傾眠、低血圧、徐脈、失神に注意する
・急に中止せず、徐々に減量する
・2回以上連続して休薬した場合は、以前の維持量を自己判断でそのまま再開しない

インチュニブ(グアンファシン)とは?

一般名
グアンファシン塩酸塩
代表的商品名
インチュニブ
薬効分類
注意欠陥/多動性障害治療剤・選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬
剤形
徐放錠1mg・3mg
国内承認適応
注意欠如・多動症(ADHD)
対象
6歳以上の小児・青年および成人
投与回数
1日1回
成人の通常用量
2mg/日から開始し、4~6mg/日を維持量とする。最大6mg/日
半減期
健康成人で平均約18.4時間(1mg単回投与時)
主な代謝
CYP3A4・CYP3A5

インチュニブの作用機序|前頭前皮質のネットワークを支える

ADHDでは、単に「集中力が弱い」というだけではなく、必要な情報を頭の中に保持するワーキングメモリ、衝動を抑える行動抑制、感情を一旦受け止めてから行動を選択する情動制御など、前頭前皮質が担う実行機能が重要になります。

グアンファシンは、前頭前皮質の神経細胞に存在する後シナプスα2Aアドレナリン受容体を刺激します。

インチュニブ(グアンファシン)の作用機序|α2Aアドレナリン受容体と前頭前皮質
インチュニブ(グアンファシン)は前頭前皮質のα2Aアドレナリン受容体を介して神経ネットワークを調整します。
α2A受容体刺激
→
cAMP低下
→
HCN/K+チャネル開口抑制
→
PFCネットワーク安定化
→
注意・行動・情動制御を支える

「神経の漏電を減らす」と説明される理由

前頭前皮質の神経細胞では、細胞内cAMPが増えるとHCNチャネルなどのカチオンチャネルが開き、神経細胞間で保持すべき信号が弱くなる方向へ働きます。

グアンファシンがα2A受容体を刺激すると、Giタンパク質を介してcAMPシグナルが抑制され、HCNチャネルなどが閉じる方向へ作用します。その結果、前頭前皮質の神経細胞同士が必要な情報を保持しやすくなると考えられています。

眠くすることがADHD治療作用ではありませんインチュニブでは眠気が起こりやすいため、「鎮静させることで多動を抑える薬」と理解されることがあります。

しかし、ADHDへの主要な作用として重視されているのは、前頭前皮質の後シナプスα2A受容体を介したネットワーク機能の調整です。眠気は治療目的ではなく、副作用として評価する必要があります。

どのようなADHD症状に効果がある?

インチュニブは、ADHDの主要症状である不注意、多動性、衝動性の改善を目的として使用されます。

日本人成人ADHD患者を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、ADHD-RS-IV総得点だけでなく、不注意サブスケール、多動・衝動性サブスケールの双方でプラセボより有意な改善が認められました。

成人第III相試験
201例
グアンファシン101例/プラセボ100例
ADHD-RS-IV
効果量 0.52
プラセボとの比較
改善した領域
両方
不注意+多動・衝動性

他のADHD治療薬との直接比較ではありません効果量0.52という数字はインチュニブとプラセボの比較から得られた値です。

この数字だけから、コンサータ、ビバンセ、ストラテラより強い・弱いと結論することはできません。

衝動性・イライラ・情動調整困難が強いADHDで使われる理由

成人ADHDでは、不注意や多動だけではなく、感情が急激に高ぶる、怒りを切り替えにくい、些細な刺激に過剰反応する、考える前に行動してしまうといった情動調整困難が臨床上しばしば問題になります。

情動調整困難はDSM-5-TRにおけるADHDの正式な中核診断項目ではありませんが、多くの研究で成人ADHDとの関連が報告されており、メタ解析でもADHD群では健常対照群より情動調整困難が明確に強いことが示されています。

前頭前皮質は注意だけでなく、行動や感情に対するトップダウン制御にも関係します。グアンファシンが前頭前皮質ネットワークを安定化させるという薬理作用は、衝動性や情動調整困難が前景にある患者で臨床的に選択される理論的背景の一つになります。

反抗的・衝動的行動への臨床試験

ADHDに反抗的症状を伴う6~12歳児217例を対象としたランダム化比較試験では、グアンファシン徐放錠はプラセボと比較して反抗症状を有意に改善し、効果量は0.59でした。

さらに、刺激薬単独で反応が不十分な小児・青年にグアンファシンを追加した試験でも、反抗症状の改善が報告されています。

反抗症状RCT
効果量 0.59
ADHD+反抗症状の小児
成人ADHD試験
衝動性も改善
多動・衝動性サブスケールで有意差

「怒りを抑える薬」として使うわけではありませんイライラ、攻撃性、自傷、感情の不安定さには、ADHDだけでなく、うつ病、双極性障害、PTSD、ASD、境界性パーソナリティ障害、物質使用など多くの原因があります。

ADHDに関連する衝動性や実行機能障害が背景にあるかを評価した上で使用する必要があります。

境界性パーソナリティ障害などへの応用研究

2025年には、境界性パーソナリティ障害で自傷・攻撃・衝動性が強い2症例にグアンファシンを使用し、改善を認めた症例報告が発表されています。

これはα2A受容体刺激による前頭前皮質のトップダウン制御という薬理学的仮説と整合しますが、わずか2症例の報告であり、境界性パーソナリティ障害に対する有効性が確立したという意味ではありません。

境界性パーソナリティ障害では心理療法が治療の中心であり、インチュニブの国内承認適応もADHDです。

不安が強いADHDでインチュニブを選ぶことがある理由

ADHDと不安症はしばしば併存します。また、ADHDに伴う失敗経験や対人関係上の困難によって二次的に不安が強まっている場合もあります。

臨床では、強い不安、緊張、動悸、過覚醒などがあり、中枢刺激薬による覚醒度上昇や不眠・焦燥の悪化をできるだけ避けたい場合に、非中枢刺激薬を選択することがあります。

インチュニブは中枢刺激薬ではなく、交感神経活動を低下させる方向にも作用するため、特に頻脈、動悸、発汗、身体的な緊張など交感神経過緊張を伴う患者では臨床的に選択しやすいことがあります。

ただし、インチュニブは抗不安薬ではありません6~17歳の全般性不安症、分離不安症、社交不安症を対象にした小規模パイロットRCTでは、グアンファシン徐放錠は比較的良好な忍容性を示し、医師評価の全般改善度では改善例が数値上多くみられました。

しかし、PARSやSCAREDなどの不安尺度ではプラセボとの明確な差は確認されていません。

したがって、「インチュニブには確立した抗不安作用がある」とするのは現時点では過大評価です。

不安症そのものが治療対象となる場合には、診断に応じてSSRI・SNRI、認知行動療法などの標準的治療を検討します。

抑うつを伴うADHDではどう考える?

成人ADHDでは、慢性的な失敗経験、自尊感情の低下、対人・就労上の困難などから、抑うつ症状を伴うことがあります。

また研究では、成人ADHDの情動調整困難が強いほど、抑うつ症状や不安、心理社会的機能障害も強い傾向が報告されています。

このような患者では、ADHD治療によって実行機能や衝動性が改善し、結果として失敗経験や心理的負担が減ることはあります。

一方、インチュニブを抗うつ薬として使用する根拠は確立していません。

「抑うつがあるからインチュニブ」ではなく「刺激薬で悪化させたくないADHD」で考える不安・抑うつ・トラウマ関連症状などが強く、刺激薬による不眠、焦燥、過覚醒などが懸念される患者では、臨床的に非中枢刺激薬から治療を考えることがあります。

その中でも、衝動性、情動調整困難、交感神経過緊張が目立つ場合にはインチュニブが候補となります。

一方、抑うつ気分、興味喪失、希死念慮などが大うつ病性障害によるものであれば、うつ病としての評価と標準治療を別に行う必要があります。

うつ病への研究はまだ探索段階

近年、前頭前皮質の認知制御回路に障害を持つ一部のうつ病患者を対象として、α2A受容体作動薬グアンファシンを用いる探索的研究も報告されています。

しかし、小規模かつ特定の神経認知プロファイルを対象とした研究であり、使用された製剤・研究デザインもADHDに対するインチュニブ治療とは異なります。

現段階では、うつ病に対する一般的な治療薬としてグアンファシンを位置づける根拠にはなりません。

当院ではどのように使い分ける?

ADHD治療薬は、単に「効果が強い順」に選択するものではありません。

臨床像 薬剤選択で考えるポイント
不注意が主体 覚醒度、日中機能、効果発現速度、副作用などを含めて刺激薬・非刺激薬を検討
衝動性・多動が強い インチュニブを含むADHD治療薬が候補。グアンファシンは多動・衝動性への直接的な試験データがある
イライラ・情動調整困難 ADHDに伴う衝動性・実行機能障害が背景ならインチュニブを検討することがある。他の気分障害などを鑑別
不安・過覚醒が強い 刺激薬による活性化を避けたい場合に非刺激薬を検討。交感神経症状が目立つ場合はインチュニブが選択肢
抑うつを併存 抑うつ自体の診断・治療を行った上でADHD薬を選択。インチュニブを抗うつ薬としては扱わない
チックを併存 α2作動薬はADHD+チックで選択肢となる。刺激薬も必ずしもチックを悪化させるとは限らない
食欲低下・不眠が問題 刺激薬の副作用が問題となる場合、非刺激薬への変更・選択を検討
低血圧・徐脈 インチュニブは慎重。循環器系への影響を考慮して別の薬剤を検討する場合がある

臨床的な「使われやすさ」と承認適応は分けて考えます不安、抑うつ、情動不安定、攻撃性そのものはインチュニブの国内承認適応ではありません。

これらを伴う患者でインチュニブが選択される場合も、基本的にはADHDを治療対象として、併存症や副作用リスクを考慮した薬剤選択と考えるのが適切です。

チック症を併存するADHD

ADHDとチック症・トゥレット症は併存することがあります。

α2アドレナリン受容体作動薬については、ADHDとチックを併存する患者でADHD症状とチック症状の双方を改善する可能性が報告されています。

このため、チックを伴うADHDではインチュニブが選択肢となることがあります。

「刺激薬はチックを悪化させるから禁止」ではありません現在では、治療用量の刺激薬がすべての患者でチックを悪化させるとは考えられていません。

チックがあるという理由だけでインチュニブに固定するのではなく、ADHD症状、チックの重症度、治療反応、副作用を総合して判断します。

なお、インチュニブの国内承認適応はADHDであり、チック症そのものへの適応ではありません。

コンサータ・ビバンセ・ストラテラとの違い

薬剤 分類・主作用 臨床上の特徴
インチュニブ
グアンファシン
非刺激薬
α2A受容体刺激
衝動性・多動・情動制御を含む前頭前皮質機能に作用。傾眠、低血圧、徐脈に注意
ストラテラ
アトモキセチン
非刺激薬
ノルアドレナリン再取り込み阻害
覚醒刺激が比較的少ない。悪心、食欲低下、心拍・血圧変化などに注意
コンサータ
メチルフェニデート徐放錠
中枢刺激薬
DA・NA再取り込み阻害
比較的速やかな効果発現。食欲低下、不眠、心拍・血圧上昇などに注意
ビバンセ
リスデキサンフェタミン
中枢刺激薬
アンフェタミン系プロドラッグ
カテコールアミン神経伝達を増強。食欲低下、不眠、心拍・血圧上昇などに注意

用法・用量

成人

18歳以上の通常用量通常、グアンファシンとして1日2mgから開始し、1週間以上の間隔をあけて1mgずつ増量します。通常の維持量は4~6mg/日、最高用量は6mg/日です。1日1回服用します。

18歳未満

小児・青年では体重によって開始量、維持量、最高用量が異なります。

体重 開始用量 維持用量 最高用量
17kg以上25kg未満 1mg 1mg 2mg
25kg以上34kg未満 1mg 2mg 3mg
34kg以上38kg未満 1mg 2mg 4mg
38kg以上42kg未満 1mg 3mg 4mg
42kg以上50kg未満 1mg 3mg 5mg
50kg以上63kg未満 2mg 4mg 6mg
63kg以上75kg未満 2mg 5mg 6mg
75kg以上 2mg 6mg 6mg

通常は1週間以上の間隔をあけて1mgずつ増量します。

錠剤を割る・砕く・かみ砕くことはできませんインチュニブは薬剤が徐々に放出されるように設計された徐放錠です。

1mg錠や3mg錠を半分に割って0.5mg・1.5mgとして使用したり、粉砕・すりつぶし・かみ砕きを行ったりしないでください。

朝と夜、どちらに飲む?

インチュニブは1日1回服用します。朝または夜の服用が可能ですが、処方医から指定された時間帯に、毎日おおよそ同じ時刻に服用します。

眠気が強い場合には服用時間を変更することがありますが、眠気が強い原因が用量そのものにある場合もあります。

自己判断で時間帯だけを変更するのではなく、主治医と相談してください。

何日休薬したら、もう一度少量から増量する?

2回以上連続して飲み忘れた場合は再漸増を検討します日本の患者向医薬品ガイドでは、飲み忘れた場合は医師または薬剤師へ相談するよう記載されています。

またPMDAの審査資料に収載された海外製品情報では、2回以上連続して飲み忘れた後に以前の維持用量を再開する場合、忍容性に応じて再漸増を検討するとされています。

「2日空いたら必ず1mgに戻す」という規則ではない

国内添付文書には、「○日以上空いたら必ず1mgから再開する」という固定された再導入方法は規定されていません。

また、成人の通常開始量は2mg/日なので、成人を含めて「休薬したら必ず1mgから」という説明も正確ではありません。

再開量は、休薬期間、休薬前の用量、以前の眠気や低血圧、血圧・脈拍、年齢、体重、併用薬などを踏まえて判断します。

薬物動態から考えると約4日で大部分が消失

健康成人におけるグアンファシンの平均消失半減期は約18.4時間です。

24時間後
約40%
理論上の残存量
48時間後
約16%
理論上の残存量
72時間後
約7%
理論上の残存量
96時間後
約3%
理論上の残存量

「4日ルール」があるわけではありません約4日という数字は半減期から計算した薬物動態上の目安であり、添付文書上の再開基準ではありません。

ただし数日間休薬すると薬物曝露は大きく低下するため、高用量を服用していた患者が以前の維持量を突然再開すると、眠気、低血圧、徐脈などが再び強く出る可能性があります。

数日以上空いた場合には、開始時に近い考え方で忍容性を再評価し、必要に応じて低用量から再漸増します。

やめた後、効果はどれくらい続く?

インチュニブは、最後の錠剤を飲んで24時間経過した瞬間に作用が完全になくなる薬ではありません。

半減期が平均約18.4時間あるため、最終服用後も血中のグアンファシンは数日かけて徐々に減少します。

血中に残っている時間と、ADHDへの効果が続く時間は同じではありません血中濃度が50%になったからADHDへの効果も50%になる、という単純な関係ではありません。

臨床的には、薬理作用は最終服用後1~数日程度かけて徐々に弱くなると考えるのが実際的ですが、症状の戻り方には個人差があります。

「最後に飲んでから正確に○時間まで効く」と一律に決められるデータはありません。

また、薬物療法中に身につけた環境調整、スケジュール管理、行動習慣などは薬がなくなっても残るため、「薬の効果」と「生活機能の改善」が完全に一致しない場合もあります。

急にやめてはいけない理由

インチュニブを急に中止すると、交感神経活動が相対的に強まり、反跳性の血圧上昇や頻脈が起こる可能性があります。

中止時の基本原則として3日間以上の間隔をあけながら1mgずつ減量し、血圧・脈拍を確認しながら中止します。

自己判断で突然中止しない「眠いから今日からやめる」「もう効いていない気がする」といった理由で突然服用を中断せず、減量方法を処方医と相談してください。

主な副作用

眠気・傾眠

インチュニブで特に多い副作用が傾眠・眠気です。

国内添付文書では傾眠が高頻度に報告されており、特に開始時や増量時に出現しやすくなります。

治療継続によって軽減する患者もいますが、全員が短期間で慣れるわけではありません。

「1週間我慢すれば必ず慣れる」わけではありません眠気関連の副作用は増量期に多く、時間経過とともに改善する例もあります。

しかし、学校や仕事中に眠ってしまう、起床できない、日常生活に支障がある場合には、漫然と我慢せず用量・服用時刻を再評価します。

低血圧・徐脈

グアンファシンには中枢性交感神経活動を低下させる作用があるため、血圧と心拍数が低下することがあります。

注意する症状
・血圧低下
・起立性低血圧
・徐脈
・立ちくらみ
・めまい
・失神
・房室ブロック

その他の副作用

頭痛、倦怠感、口渇、便秘、腹痛、食欲減退、体重増加などがみられることがあります。

血圧・脈拍・心電図のモニタリング

インチュニブはADHD治療薬であると同時に、循環器系への作用を持つ薬剤です。

時期 主な確認項目
開始前 血圧、脈拍、心電図異常、心血管系既往、併用薬
開始・増量後 眠気、めまい、血圧、脈拍。特に増量後1~2週間は注意
維持療法 血圧、脈拍、体重、副作用、治療効果を定期的に確認
失神・強い動悸など 循環器系の評価、必要に応じ心電図などを検討

薬物相互作用|CYP3A4・CYP3A5

グアンファシンは主としてCYP3A4・CYP3A5で代謝されます。

CYP3A4/5阻害薬

クラリスロマイシン、イトラコナゾール、リトナビルなどではグアンファシンの血中濃度が上昇し、眠気、低血圧、徐脈などが強くなる可能性があります。

CYP3A4/5誘導薬

カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、リファンピシンなどではグアンファシンの血中濃度が低下し、治療効果が弱くなる可能性があります。

鎮静作用を持つ薬・アルコール

睡眠薬、抗不安薬、抗精神病薬、アルコールなどとの併用では、眠気や鎮静が強くなる可能性があります。

降圧薬・心拍数を低下させる薬

降圧薬やβ遮断薬などとの併用では、血圧低下や徐脈が強くなる可能性があります。

使用できない場合

禁忌本剤の成分に対する過敏症の既往、妊婦または妊娠している可能性がある女性、第二度または第三度房室ブロックのある患者には使用できません。

特に慎重な評価が必要な場合

低血圧、起立性低血圧、徐脈、心血管疾患、不整脈、QT延長リスク、虚血性心疾患、脳血管障害、重度の腎機能障害・肝機能障害などでは、より慎重な投与設計とモニタリングが必要です。

インチュニブだけでADHDを治療するわけではない

ADHD治療では、薬物療法だけでなく、環境調整や心理社会的支援が重要です。

薬によって注意機能や衝動抑制を支えたうえで、

・予定やタスクの可視化
・作業環境の整理
・先延ばしへの対策
・学校や職場での環境調整
・心理教育
・認知行動的アプローチ
・必要に応じた発達特性・認知特性の評価

などを組み合わせます。

よくある質問

インチュニブは依存しますか?

インチュニブは中枢刺激薬ではなく、コンサータやビバンセと同様の乱用・依存リスクを持つ薬ではありません。ただし、急に中止すると血圧上昇や頻脈が起こる可能性があるため徐々に減量します。これは依存症とは異なる現象です。

不安が強い人にはインチュニブが向いていますか?

中枢刺激薬による覚醒・不眠・焦燥の悪化が懸念される場合や、動悸、頻脈、身体的緊張などの交感神経症状を伴う場合には選択肢となることがあります。ただし、インチュニブは不安症そのものに対する標準的な抗不安薬ではありません。

うつ状態がある場合にも使えますか?

ADHDとうつ症状が併存している患者で使用することはありますが、インチュニブを抗うつ薬として使用するわけではありません。うつ病を併存している場合には、うつ病そのものに対する評価と治療が必要です。

イライラや衝動性が強い場合に効きますか?

インチュニブには多動・衝動性への有効性が確認されています。また、ADHDに反抗的症状を伴う小児の試験では反抗症状の改善も報告されています。そのため、ADHDに関連した衝動性や情動調整困難が目立つ場合には臨床的に検討されることがあります。

インチュニブは24時間効きますか?

1日1回投与を前提に設計された徐放錠ですが、服用から24時間まったく同じ強さで作用するという意味ではありません。効果の感じ方や血中濃度には個人差があります。

2日以上飲み忘れました。以前の量をそのまま飲んでもいいですか?

自己判断で以前の高い維持量をそのまま再開しないでください。海外製品情報では2回以上連続して飲み忘れた場合、忍容性に応じて再漸増を検討するとされています。処方医へ相談してください。

何日休むと最初から増量し直しますか?

国内添付文書には「○日空けば必ず初回量から」という固定基準はありません。半減期は約18.4時間で、薬物動態上は約4日で大部分が体内から減少します。数日以上休薬した場合には以前の維持量をそのまま再開せず、休薬期間や副作用歴などを踏まえて再開量を決めます。

やめた後は何日くらい効果が続きますか?

薬は最終服用後も数日かけて体内から減少しますが、血中濃度とADHDへの臨床効果は完全には一致しません。一般には1~数日かけて薬理作用が弱くなると考えられますが、症状の戻り方には個人差があります。

眠気は1週間で慣れますか?

開始時・増量時に強く、その後軽減する患者さんもいますが、全員が1週間程度で改善するわけではありません。日中生活に支障があるほどの眠気が続く場合には用量や服用時間を再評価します。

3mg錠を半分にして1.5mgで飲めますか?

できません。インチュニブは徐放錠なので、割る、砕く、すりつぶす、かみ砕くことは避け、そのまま服用してください。

チックがある場合はインチュニブが第一選択ですか?

α2作動薬はADHDとチックを併存する患者で選択肢となりますが、チックがあれば必ずインチュニブというわけではありません。現在では刺激薬も必ずしもチックを悪化させるとは考えられておらず、症状と治療反応を総合して選択します。

まとめ

インチュニブ(グアンファシン)は、α2Aアドレナリン受容体を刺激する非中枢刺激性のADHD治療薬です。

前頭前皮質の後シナプスα2A受容体を介してcAMP-HCN/K+チャネル系などを調整し、注意、ワーキングメモリ、行動抑制などを担う前頭前皮質ネットワークを支えることが、主要な薬理学的機序と考えられています。

不注意だけでなく、多動・衝動性への有効性も確認されています。また、反抗的症状へのランダム化比較試験や、前頭前皮質によるトップダウン制御という薬理学的背景から、衝動性や情動調整困難が目立つADHDで臨床的に検討されやすい薬です。

不安や抑うつを併存するADHDでも選択されることがありますが、これはインチュニブに確立した抗不安作用・抗うつ作用があるという意味ではありません。刺激薬による覚醒・不眠・焦燥を避けたい場合や、交感神経過緊張・衝動性などの臨床像を踏まえた薬剤選択と考える必要があります。

一方、傾眠、低血圧、徐脈、失神などの副作用には注意が必要です。また、2回以上連続して休薬した後は以前の維持量を自己判断で再開せず、必要に応じて再漸増します。

半減期は平均約18.4時間であり、中止後も薬は数日かけて体内から減少します。ただし血中濃度とADHDへの効果は完全には一致せず、「○時間まで効果が続く」と一律に定めることはできません。

ADHD治療では、薬剤だけでなく心理教育、環境調整、心理療法、認知特性の評価などを組み合わせ、その人の生活上の困難に合わせて治療を設計することが重要です。

執筆者
執筆者 清水聖童

ライトメンタルクリニック 渋谷本院 院長

清水聖童(Seido Shimizu)

精神保健指定医 / 日本精神神経学会認定専門医 / 認知症サポート医 / コンサータ処方登録医

引用・参考文献

・独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). インチュニブ錠1mg・3mg 電子添文. 2026年6月改訂(第6版、再審査結果).

・独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). インチュニブ 審査報告書・外国における使用状況等.

・Iwanami A, Saito K, Fujiwara M, et al. Efficacy and Safety of Guanfacine Extended-Release in the Treatment of Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder in Adults: Results of a Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study. J Clin Psychiatry. 2020;81(3):19m12979.

・Arnsten AFT, Jin LE. Guanfacine’s mechanism of action in treating prefrontal cortical disorders: Successful translation across species. Neurobiol Learn Mem. 2020;176:107327.

・Connor DF, Findling RL, Kollins SH, et al. Effects of guanfacine extended release on oppositional symptoms in children aged 6–12 years with attention-deficit hyperactivity disorder and oppositional symptoms: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. CNS Drugs. 2010;24(9):755-768.

・Findling RL, McBurnett K, White C, Youcha S. Guanfacine extended release adjunctive to a psychostimulant in the treatment of comorbid oppositional symptoms in children and adolescents with attention-deficit/hyperactivity disorder. J Child Adolesc Psychopharmacol. 2014;24(5):245-252.

・Strawn JR, Compton SN, Robertson B, et al. Extended Release Guanfacine in Pediatric Anxiety Disorders: A Pilot, Randomized, Placebo-Controlled Trial. J Child Adolesc Psychopharmacol. 2017;27(1):29-37.

・Politte LC, Scahill L, Figueroa J, et al. A randomized, placebo-controlled trial of extended-release guanfacine in children with autism spectrum disorder and ADHD symptoms: analysis of secondary outcome measures. Neuropsychopharmacology. 2018;43:1772-1778.

・Beheshti A, Chavanon ML, Christiansen H. Emotion dysregulation in adults with attention deficit hyperactivity disorder: a meta-analysis. BMC Psychiatry. 2020;20:120.

・Faraone SV, Rostain AL, Blader J, et al. Practitioner Review: Emotional dysregulation in attention-deficit/hyperactivity disorder – implications for clinical recognition and intervention. J Child Psychol Psychiatry. 2019;60(2):133-150.

・Mori H, et al. Efficacy of Guanfacine for Self-injurious and Aggressive Behaviors through the Reduction of Impulsivity in Borderline Personality Disorder: Two Case Reports and a Literature Review. Clin Psychopharmacol Neurosci. 2025.

・Scahill L, Chappell PB, Kim YS, et al. A placebo-controlled study of guanfacine in the treatment of children with tic disorders and attention deficit hyperactivity disorder. Am J Psychiatry. 2001;158(7):1067-1074.

・井上猛, 桑原斉, 酒井隆, 鈴木映二, 水上勝義, 宮田久嗣, 諸川由実代, 吉尾隆, 渡邉博幸 編. こころの治療薬ハンドブック 第16版. 星和書店; 2026.

・樋口輝彦, 市川宏伸, 神庭重信, 朝田隆, 中込和幸 編. 今日の精神疾患治療指針 第2版. 医学書院; 2016.

・姫井昭男. 精神科の薬がわかる本 第5版. 医学書院; 2024.

上部へスクロール