メンタルヘルスコラム

【精神科専門医解説】レクサプロ(エスシタロプラム)の効果・副作用|10mg・20mgの使い分け、性機能・離脱まで

  • 更新日:2026.09.26
  • 公開日:2026.09.26

はじめに

レクサプロ(一般名:エスシタロプラム)は、
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
に分類される抗うつ薬です。

日本では
うつ病・うつ状態
および
社交不安症(社会不安障害)
に承認されています。

レクサプロの特徴は、
特殊な鎮静作用や刺激作用が強いことではなく、
抗うつ効果、抗不安作用、忍容性、薬物相互作用の少なさを含めた
全体のバランスが比較的よいこと
にあります。

特に、不安や緊張を強く伴ううつ状態や、
人前での不安、予期不安、回避行動が強い患者さんでは、
精神科臨床で検討しやすい抗うつ薬の一つです。

一方で、
吐き気、眠気、性機能障害などのSSRIに共通する副作用に加えて、
QT延長とCYP2C19による血中濃度の個人差
はレクサプロを使用する際に意識しておきたいポイントです。

この記事のポイント

  • レクサプロは代表的なSSRIの一つ
  • 国内適応は「うつ病・うつ状態」「社交不安症」
  • 通常10mgを1日1回、必要に応じて20mgまで増量する
  • 抗うつ作用だけでなく抗不安作用も重要
  • 悪心、眠気、性機能障害、賦活化などに注意する
  • QT延長とCYP2C19による血中濃度差を意識する
  • 高齢者・肝機能障害では5mg程度から慎重に開始することもある
  • 依存を特徴とする薬ではないが、急な中止では中断症状が起こり得る

レクサプロの基本情報

一般名
エスシタロプラムシュウ酸塩
代表商品名
レクサプロ
薬効分類
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
国内承認適応
うつ病・うつ状態、社交不安症
通常用量
10mgを1日1回夕食後
最大用量
20mg/日
増量間隔
1週間以上
半減期
おおむね約25~30時間

レクサプロの作用機序

レクサプロ(エスシタロプラム)の作用機序
レクサプロはセロトニントランスポーター(SERT)を阻害し、
シナプス間隙のセロトニン作用を高めます。

神経細胞から放出されたセロトニン(5-HT)は、
通常、セロトニントランスポーター(SERT)によって
神経終末へ再取り込みされます。

レクサプロはこのSERTを選択的に阻害し、
シナプス間隙で作用するセロトニンを増加させる
ことで、セロトニン神経伝達を調節します。

SERT阻害そのものは服用開始後早期から生じますが、
気分や不安の改善には、
その後に生じる受容体や神経回路の適応的変化も関係すると考えられています。

そのため、
「飲んですぐに不安を消す」というタイプの薬ではなく、
毎日継続して服用し、数週間単位で効果を評価する薬
です。

シタロプラムのS体だけを用いた薬

シタロプラムには、
S体とR体という2つの光学異性体があります。

エスシタロプラムは、
このうちセロトニン再取り込み阻害作用を主として担う
S体のみを薬剤化したものです。

エスシタロプラムについては、
SERTの主要結合部位に加えて、
別のアロステリック部位にも結合する可能性が報告されています。


アロステリック作用は興味深い特徴ですが、臨床効果との関係は慎重に考える必要があります

基礎研究では、
アロステリック部位への結合によって
エスシタロプラムがSERTに結合した状態を安定化させる可能性が示されています。

一方で、
この機序が実際の患者さんにおける抗うつ効果の優位性を
どこまで説明するかについては結論が確定していません。

レクサプロの作用を理解するうえでは、
SERT阻害によるセロトニン再取り込み抑制が中心作用
と考えるのが適切です。

レクサプロの臨床的位置づけ

レクサプロは、

うつ病

の薬物療法で広く使用されるSSRIです。

多数の抗うつ薬を比較した研究では、
エスシタロプラムは
抗うつ効果と治療継続性の双方で比較的良好な結果
が報告されています。

ただし、
「最も強い抗うつ薬」
「誰にでも最もよく効く抗うつ薬」
という意味ではありません。

実際の薬剤選択では、
不安、不眠、食欲、疼痛、体重、性機能、
身体疾患、併用薬、過去の治療反応などを考慮します。

例えば、
慢性疼痛を伴う場合には

サインバルタ(デュロキセチン)
、
より高用量でSNRIとしての作用を期待する場合には

イフェクサーSR(ベンラファキシン)
、
不眠や食欲低下が目立つ場合には

リフレックス(ミルタザピン)

など、それぞれの特徴を考えて選択します。

抗うつ薬全体の特徴については、

抗うつ薬の効果・副作用・使い分け

も参考にしてください。

レクサプロは不安にも効く?

レクサプロは抗うつ薬ですが、
抗不安作用も重要な特徴です。

日本では

社交不安症

に正式な適応があります。

人前で話す、
人から見られる、
評価される、
失敗して恥をかくのではないかと考えるといった場面への
強い不安に対して使用されます。

日本人の社交不安症を対象とした臨床試験では、
10mgおよび20mgが検討されています。

社交不安症では、
不安そのものだけでなく、
不安を避けるために人付き合い・仕事・学校・外出などを避ける
「回避行動」

が生活を制限することがあります。

治療では、
「不安が何点下がったか」だけでなく、
人と話す、電話する、会議に参加する、外出するなど、
避けていた行動が徐々に可能になったかも重要です。

全般性不安症・パニック症でも研究されている

海外では、

全般性不安症(GAD)

や

パニック症

に対してもエスシタロプラムの有効性が研究されています。

ただし、
日本国内でのレクサプロの承認適応は
「うつ病・うつ状態」と「社交不安症」です。

不安症の治療では薬物療法だけでなく、

認知行動療法(CBT)

も重要な治療選択肢です。

薬によって不安の強度を下げながら、
不安を維持する考え方や回避行動に
心理療法で介入することもあります。

「不安をその場ですぐ止める薬」ではありません

レクサプロは、
ベンゾジアゼピン系抗不安薬のように
服用直後の不安を頓服的に抑える薬ではありません。

毎日継続して服用しながら、
不安を起こしやすい神経系の状態を
徐々に調整していく薬と考えると理解しやすいでしょう。

10mgと20mgはどう使い分ける?

成人では通常、
10mgを1日1回夕食後
に服用します。

効果が不十分で、
副作用が許容できる場合には、
1週間以上の間隔をあけて最大20mg/日まで増量できます。

用量 臨床上の考え方
5mg程度 電子添文上の通常開始量ではないが、
副作用に敏感な患者、高齢者、肝機能障害などで
慎重に導入する際に用いることがある
10mg/日 成人の標準的な治療用量。
十分改善している場合には無理に増量しない
20mg/日 10mgで部分改善にとどまり、
副作用に問題がない場合に検討する

そのため、
「20mgまで増やすほどよい」
という考え方ではなく、
10mgでどこまで改善したかを確認してから20mgを検討する
のが実践的です。

十分量まで増量しても改善が乏しい場合には、
同じSSRI内での変更だけでなく、

イフェクサーSR

や

サインバルタ

などSNRIへの変更を検討することもあります。

5mgから開始することはある?

国内電子添文における成人の通常開始量は
10mg/日です。

一方で、
実際の精神科診療では、
SSRI開始時の悪心、焦燥、不眠などが出やすい患者さんや、
薬に対する感受性が高い患者さんでは、
より少量から慎重に導入することがあります。


執筆者の臨床的見解|
高齢者・肝機能障害では5mg程度から開始することが多い

電子添文上の通常開始量は10mgですが、
私自身は、
高齢者や肝機能障害のある患者さんでは
5mg程度から開始することが比較的多い

です。

これは、
「高齢者や肝機能障害では必ず5mgから開始しなければならない」
という意味ではありません。

高齢者では若年者より血中濃度が高くなる傾向があり、
肝機能障害ではクリアランス低下によって
エスシタロプラムへの曝露量が増加します。

国内電子添文でも、
高齢者や肝機能障害患者では
QT延長などの副作用リスクを考慮し、
10mgを上限とすることが望ましい
とされています。

そのため実臨床では、
初回から10mgを投与して
吐き気、眠気、焦燥感などが強く出て
薬そのものを中断してしまうより、
まず5mg程度で忍容性を確認し、
必要に応じて10mgへ増量する方が
治療を継続しやすい患者さんもいると考えています。

特に、
高齢、低体重、肝機能低下、多剤併用、
過去にSSRIの初期副作用が強かった患者さんでは、
より慎重な導入を選択することがあります。

どのくらいで効果が出る?

レクサプロは、
服用した直後に気分や不安を大きく変える薬ではありません。

睡眠、不安、食欲などに比較的早い変化を感じることもありますが、
抑うつ症状全体については
数週間単位で評価します。

十分な効果判定には、
4~8週間程度を要することもあります。

社交不安症の場合には、
「不安がゼロになったか」だけではなく、
人と話す、電話をする、会議に参加する、外出するなど、
避けていた行動が徐々に可能になっているか
を確認することも重要です。

主な副作用

副作用 臨床上の特徴
悪心・吐き気 開始初期に比較的みられやすい。
継続によって軽減することも多い
眠気 日中の活動や運転への影響に注意する
めまい・頭痛 開始時や増量時にみられることがある
不眠・焦燥感 一部では開始初期に不安や落ち着かなさが強くなる
性機能障害 性欲低下、射精遅延、射精障害、勃起障害、
オーガズムに達しにくいなど
発汗 SSRIでみられることがある副作用

吐き気はいつまで続く?

セロトニンは脳だけではなく消化管にも多く存在するため、
SSRIを開始すると吐き気や腹部不快感が出ることがあります。

多くの場合は治療初期に強く、
継続しているうちに軽減していきます。

ただし、
食事がとれない、
嘔吐が続く、
日常生活に大きな支障が出る場合には、
無理に我慢して服用を続ける必要はありません。

用量を調整する、
導入速度を遅くする、
他の抗うつ薬へ変更するなどの対応を検討します。

性機能障害には注意が必要

SSRIの長期治療で見落とされやすい副作用の一つが、
性機能障害です。

レクサプロでも、
性欲低下、射精遅延、射精障害、
勃起障害、オーガズムに達しにくいなどが
起こることがあります。

一方で、

うつ病

そのものでも性欲や性機能が低下するため、
病気による症状なのか薬剤による副作用なのか
判断が難しいこともあります。

性機能障害は我慢せず相談してください

性機能については患者さんから医師へ言い出しにくく、
医療者が把握しないまま服薬中断につながることがあります。

用量調整や薬剤変更などを検討できるため、
気になる場合には診察時に相談してください。

SSRIによる性機能障害が治療継続上の問題となる場合には、
症例によって

トリンテリックス(ボルチオキセチン)

などへの変更を検討します。

開始直後に不安が強くなることはある?

抗うつ薬の開始直後や増量直後には、
一部の患者さんで
不安、焦燥、興奮、不眠、易刺激性、
落ち着かなさなどが強くなることがあります。

これらは、
いわゆる
賦活化症候群(activation syndrome)
と呼ばれることがあります。

「不安に効くと聞いたのに、
飲み始めたら一時的に不安が増えた」
ということは矛盾ではありません。

特に不安が非常に強い患者さんでは、
導入量や増量速度を慎重に設定します。

双極症の可能性にも注意する

抑うつ状態に見える患者さんの一部には、
背景に双極症が存在することがあります。

過去に、
ほとんど眠らなくても活動できた時期、
普段とは明らかに異なる高揚感、
活動性の著しい増加、
衝動的な買い物や行動などがあった場合には、
抗うつ薬開始前に主治医へ伝えることが重要です。

抗うつ薬によって躁状態や軽躁状態が誘発されることがあるためです。

QT延長には注意が必要

レクサプロでは、
心電図上の
QT間隔が延長する可能性
が知られています。

QT延長が高度になると、
非常にまれではありますが、
torsade de pointesを含む
重篤な心室性不整脈につながる可能性があります。

特にQT延長を意識するケース

  • すでにQT延長がある
  • 著しい徐脈や不整脈の既往がある
  • うっ血性心不全がある
  • 低カリウム血症などの電解質異常がある
  • QT延長を起こす可能性のある他の薬剤を使用している
  • 高齢者
  • 肝機能障害がある
  • CYP2C19の代謝活性が低い
  • 20mgへの増量を検討している

先天性QT延長症候群など、
すでにQT延長がある患者さんには使用できません。

一方で、
レクサプロを服用するすべての患者さんに
定期的な心電図検査が必須とされているわけではありません。

日本人ではCYP2C19の代謝が遅い人が比較的多い

レクサプロは主として
CYP2C19
によって代謝され、
CYP2D6およびCYP3A4も代謝に関与します。

CYP2C19の酵素活性には遺伝的な個人差があります。

薬を速く代謝する人もいれば、
通常程度の人、
やや遅い人、
大きく遅い人が存在します。


日本人ではCYP2C19 poor metabolizerが比較的多い

2025年に報告された日本人集団を基にした推定では、
CYP2C19は
poor metabolizer(PM)17.5%、
intermediate metabolizer(IM)48.8%

とされています。

PMだけでも、
おおむね6人に1人に相当します。

CYP2C19による代謝が遅い患者さんでは、
同じ用量を服用していても
エスシタロプラムの血中濃度が高くなる可能性があります。

CYP2C19 PMでは、
エスシタロプラムへの曝露量や半減期が増加することが知られています。

そのため国内電子添文でも、
CYP2C19の活性が遺伝的に欠損していることが判明している患者では、
QT延長などの副作用リスクを考慮し、
10mgを上限とすることが望ましい
とされています。

高齢者・肝機能障害でも慎重に使用する

高齢者では、
若年成人と比較して
エスシタロプラムへの曝露量が増加する傾向があります。

また、
肝機能障害ではクリアランスが低下し、
血中濃度が上昇する可能性があります。

国内電子添文では、
高齢者、肝機能障害患者、CYP2C19 PMについて、
10mgを上限とすることが望ましい
とされています。


執筆者の臨床的見解|
レクサプロでは心電図を確認するハードルを低くしています

レクサプロを処方するすべての患者さんに
心電図検査が必須とされているわけではありません。

また、
CYP2C19 PMだからといって、
必ずQT延長や不整脈が起こるわけでもありません。

一方で、
日本人ではCYP2C19 PMが
約17.5%、おおむね6人に1人
と推定されています。

日常診療で、
レクサプロを処方する患者さん全員に
CYP2C19遺伝子検査を行うことは現実的ではありません。

そのため私は、
レクサプロを開始する際に
一度ベースラインの心電図を確認しておくことには
臨床的なメリットがある

と考えており、
心電図を確認するハードルを比較的低くしています。

特に、
20mgへの増量を検討する場合、
高齢者、肝機能障害、
心疾患や徐脈がある場合、
電解質異常の可能性がある場合、
QT延長を起こし得る薬剤を併用している場合には、
心電図を確認する意義はより大きいと考えています。

一方で、
若く、身体疾患がなく、
QT延長リスクとなる併用薬もなく、
10mgで治療する患者さんについてまで、
「心電図を撮らなければ処方してはいけない」
と考えているわけではありません。

あくまで、
比較的簡便に確認できる安全情報であるため、
私自身はベースライン心電図を確認する閾値を低くしている

という臨床上の考え方です。

薬物相互作用

レクサプロは、
フルボキサミンやパロキセチンなど一部のSSRIと比較すると、
CYP酵素を強力に阻害する薬ではありません。

そのため、
多剤併用の患者さんでも比較的選択しやすいことがありますが、
相互作用がないわけではありません。

薬剤・成分 注意点
MAO阻害薬 併用禁忌。
セロトニン症候群の危険がある
ピモジド 併用禁忌。
QT延長に注意する
他のセロトニン作用薬 他のSSRI、SNRI、トラマドール、
リチウムなどではセロトニン作用増強に注意
CYP2C19阻害薬 オメプラゾールなどでは
エスシタロプラムの血中濃度上昇に注意する
QT延長を起こす薬剤 QT延長作用が相加的に強くなる可能性がある
NSAIDs・抗凝固薬など 出血傾向が強くなる可能性がある
アルコール 服用中の飲酒は避けることが望ましい

急に中止すると離脱症状は起こる?

レクサプロは、
ベンゾジアゼピン系抗不安薬や睡眠薬のような
依存を特徴とする薬ではありません。

しかし、
長期間服用していた抗うつ薬を急に中止すると、
抗うつ薬中断症候群
が生じることがあります。

中断時に起こることがある症状

  • めまい・ふらつき
  • 不安・焦燥感
  • いらいら
  • 不眠
  • 頭痛
  • 吐き気
  • 感覚の違和感
  • 電気が走るような感覚

症状が改善したからといって、
自己判断で突然中止することは勧められません。

抗うつ薬の中では、

イフェクサーSR(ベンラファキシン)

やパロキセチンなど、
特に中断症状を意識する薬剤もあります。

減薬は低用量になるほど慎重に

抗うつ薬の減薬では、
「10mgから5mgにして、
その後2.5mgにして中止する」
といった固定スケジュールが
すべての患者さんに適しているわけではありません。

服用期間、
過去の中断症状、
再発リスク、
現在の症状を確認しながら、
個別に減量速度を決めます。

特に、
低用量になってから中断症状が出やすい患者さんでは、
減量幅をさらに小さくすることがあります。

また、
服用日と休薬日を交互にするような隔日投与は、
血中濃度の上下を生じさせるため、
機械的に選択する方法ではありません。

セロトニン症候群

レクサプロを含むセロトニン作用薬では、
まれに
セロトニン症候群
が起こることがあります。

他のSSRIや

イフェクサーSR
、

サインバルタ

などのセロトニン作用薬を併用・切り替える際にも、
処方設計に注意が必要です。

注意する症状

  • 発熱
  • 発汗
  • 振戦
  • 筋肉のこわばり
  • ミオクローヌス
  • 興奮・混乱
  • 頻脈
  • 下痢などの自律神経症状

こうした症状が急速に出現した場合には、
速やかな医学的評価が必要です。

他の抗うつ薬との臨床的な違い

薬剤 臨床上の特徴 選択時に意識する点
レクサプロ
エスシタロプラム
効果と忍容性のバランスが比較的よく、
不安を伴ううつ状態にも使いやすい
性機能障害、
QT延長、
CYP2C19を意識する
ジェイゾロフト
セルトラリン
代表的なSSRIで臨床経験が豊富 下痢などの消化器症状が問題になることがある
パキシル
パロキセチン
不安症状にも広く使用されてきたSSRI 中断症状、性機能、体重、
CYP2D6相互作用を意識する

トリンテリックス
ボルチオキセチン
認知症状や性機能への影響を考慮するときに
選択肢となる
悪心が代表的な弱点

サインバルタ
デュロキセチン
SNRI。
疼痛を伴う患者で特徴を活かしやすい
悪心、発汗、血圧などを考慮する

イフェクサーSR
ベンラファキシン
SNRI。
高用量ではノルアドレナリン作用がより明確になる
血圧と中断症状を意識する

リフレックス
ミルタザピン
不眠や食欲低下が目立つ場合に
特徴を活かしやすい
眠気、食欲増加、体重増加を意識する

SSRI、SNRI、NaSSAなど、
抗うつ薬全体の特徴や考え方については、

抗うつ薬の効果・副作用・使い分け

も参考にしてください。

執筆者の臨床的見解|レクサプロをどう使うか

私自身はレクサプロを、
SSRIの中でも治療導入時に比較的選択しやすい薬
と考えています。

理由は、
「特別に切れ味が鋭いから」というより、
抗うつ効果、抗不安作用、忍容性、
薬物相互作用の少なさなどを含めた
バランスの良さ
にあります。

特に、
抑うつ気分だけではなく、
「常に心配している」
「人前に出ることが怖い」
「失敗するのではないかという予期不安が強い」
といった不安症状が目立つ患者さんでは、
候補に挙げやすい薬です。

一方で、
不安が強い患者さんほど、
抗うつ薬開始時の悪心や焦燥にも敏感なことがあります。

そのため、
副作用に敏感な患者さん、
高齢者、
肝機能障害のある患者さんでは、
5mg程度から慎重に導入する
ことがあります。

10mgで明らかな改善が得られている場合には、
必ずしも20mgまで増量する必要はありません。

反対に、
10mgで部分改善は得られているものの、
抑うつや不安が明確に残り、
副作用に問題がなければ、
20mgを試す価値があります。

それでも改善が不十分な場合には、
症状の特徴に応じて薬剤を変更します。

例えば、
疼痛を伴う場合には

サインバルタ(デュロキセチン)
、
より高用量でSNRI作用を狙いたい場合には

イフェクサーSR(ベンラファキシン)

を検討することがあります。

不眠や食欲低下が前面に出ている患者さんでは、

リフレックス(ミルタザピン)

の特徴が合うことがあります。

性機能障害が治療継続上の問題となれば、

トリンテリックス(ボルチオキセチン)

などへの変更も検討します。

また、
レクサプロでは
CYP2C19による血中濃度の個人差とQT延長
を意識しています。

日本人ではCYP2C19 PMの頻度が比較的高いため、
私自身は心電図を確認するハードルを低くしています。

特に、
高齢者、
肝機能障害、
心疾患、
徐脈、
QT延長を起こす薬剤の併用、
20mgへの増量を検討する患者さんでは、
ベースラインの心電図を確認しておく意義が大きいと考えています。

レクサプロは、
「誰にでも最も効く薬」というより、

大きな偏りが比較的少なく、
抗うつ作用と抗不安作用の双方を狙いやすいSSRI

というのが私の臨床的な位置づけです。

よくある質問

レクサプロは不安にも効きますか?

はい。
日本では

社交不安症

にも正式な適応があります。
うつ病に伴う不安症状の改善も期待できます。

飲んだらすぐ不安が楽になりますか?

頓服の抗不安薬とは異なり、
その場ですぐに不安を止める薬ではありません。
毎日継続し、数週間単位で効果を評価します。

10mgと20mgでは20mgの方が効きますか?

すべての患者さんで20mgが優れているわけではありません。
10mgで十分改善している場合には、
必ずしも増量する必要はありません。

10mgで部分改善にとどまり、
副作用が許容できる場合には20mgを検討します。

5mgから始めることはありますか?

成人の通常開始量は10mgですが、
副作用に敏感な患者さん、
高齢者、
肝機能障害のある患者さんなどでは、
医師の判断で5mg程度から慎重に開始することがあります。

心電図は必要ですか?

すべての患者さんに必須とされているわけではありません。

心疾患、徐脈、電解質異常、
QT延長を起こす薬剤の併用、
高齢者、肝機能障害、
20mgへの増量などでは、
心電図を確認する意義が高くなります。

CYP2C19とは何ですか?

レクサプロなどの薬を代謝する酵素の一つです。
CYP2C19の働きには遺伝的な個人差があり、
代謝が遅い人ではレクサプロの血中濃度が高くなることがあります。

朝に飲んでもよいですか?

国内電子添文上の用法は1日1回夕食後です。
服用時間を変更したい場合には主治医と相談してください。

レクサプロは太りますか?

強い体重増加を特徴とする薬ではありませんが、
長期服用中に体重が増加する患者さんはいます。
個人差があります。

性欲が落ちることはありますか?

あります。
性欲低下、射精遅延、勃起障害などの性機能障害は、
SSRIで重要な副作用の一つです。

レクサプロには依存性がありますか?

ベンゾジアゼピン系薬剤のような依存を特徴とする薬ではありません。

ただし、
急に中止すると中断症状が生じることがあるため、
減薬は徐々に行います。

飲み忘れた場合はどうすればよいですか?

次の服用時間が近い場合には、
飲み忘れた分を飛ばします。
2回分をまとめて服用しないでください。

まとめ

レクサプロ(エスシタロプラム)は、
セロトニントランスポーター(SERT)を阻害し、
セロトニン神経伝達を調整するSSRIです。

日本では、
うつ病・うつ状態と社交不安症
に承認されています。

通常は10mgを1日1回使用し、
効果不十分で忍容性に問題がなければ
20mgまで増量できます。

抗うつ作用だけでなく抗不安作用も重要で、
不安や緊張を強く伴う患者さんでは
特徴を活かしやすい薬剤です。

一方で、
悪心、眠気、性機能障害、
賦活化、中断症状などに注意が必要です。

また、
レクサプロでは
QT延長とCYP2C19による血中濃度差
が重要です。

日本人ではCYP2C19 poor metabolizerが
約17.5%と推定されており、
CYP2C19による代謝が遅い患者さんでは
血中濃度が高くなる可能性があります。

執筆者は、
高齢者や肝機能障害患者では
5mg程度から慎重に導入することがあり、
レクサプロ処方時には
ベースライン心電図を確認するハードルも比較的低くしています。

レクサプロは
「最も強い抗うつ薬」というよりも、

抗うつ効果、抗不安作用、忍容性を含めたバランスから
幅広い患者さんで検討しやすいSSRI

と考えると、その特徴を理解しやすいでしょう。

執筆者
清水聖童医師
ライトメンタルクリニック 渋谷本院 院長

清水聖童 (Seido Shimizu)

精神保健指定医 /
日本精神神経学会認定専門医 /
認知症サポート医 /
コンサータ処方登録医

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『今日の精神疾患治療指針 第2版』.
医学書院; 2016.

11. 姫井昭男.
『精神科の薬がわかる本 第5版』.
医学書院; 2024.

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